高校野球神奈川大会の開会式は、県内各校から集まった吹奏楽部員たちによる演奏で彩られた。

選手宣誓が終わり、吹奏楽部員たちが大会歌「栄冠は君に輝く」を演奏する。前奏が始まる直前、一塁側スタンド最上段でタテジマのユニホームを着ている一団が、誰の合図もなく、すっと立ち上がった。

「雲はわ~き!!」

横浜隼人の3年生たちだ。1学年で60人の野球部員がおり、40人以上がベンチ入りできない。彼らがメガホンを持ち寄り、大声で合唱した。

「もうずいぶん前からですよ。子どもたちから自然発生的に。別に僕たちがやれと言ったわけではありません」

そう話すのは、炎天下のネット裏で開会式を見つめていた水谷哲也監督(59)だ。「全員で1つの横浜隼人ですからね」と部員たちの意気を喜ぶ。日の丸掲揚の際も、スタンドの誰よりも先に、彼らは率先して起立していた。

リーダー役を務めた荒井翼選手(3年)が話す。

「自分たちはベンチに入れなかったんですけど、選手たちはグラウンドに立って、一生懸命行進してくれるので。選手と同じ気持ちで戦うために、一生懸命歌おうと思います」

“合唱練習”はしなかったけれど、声はそろう。思いはそろう。近くにはたまたま、横浜や横浜創学館の部員たちも座っていた。

「隼人の先輩方が最初にやり出した伝統というふうに聞いています。今日は横浜や創学館といった神奈川を代表する強豪も周りに座っているので、ここから球場全体、大会全体を盛り上げられるように」

大声に振り向き、彼らの前方に笑顔の花が咲く。動画を撮影する人もたくさん。呼応するように歌う、他校の部員たちも。

「あぁ、栄冠は君に輝く~」

大きな拍手が“隼人合唱団”に注がれ、神奈川の夏が始まった。【金子真仁】

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