カナノウ旋風、再現はならず-。18年全国準Vの金足農(秋田)は最終回に猛攻を見せたものの、西日本短大付(福岡)に4-6で敗れた。18年のエース、吉田輝星(現オリックス)も観戦する中で弟の吉田大輝投手(2年)が粘投も及ばず、涙した。初出場の新潟産大付は17年全国優勝の花咲徳栄(埼玉)に2-1で勝ち、新潟県勢では7年ぶりの初戦突破。菰野(三重)は先発出場全員2年生で南陽工(山口)を下し、春夏通じて甲子園初勝利をあげた。今大会から導入された「朝夕2部制」は、今夏はこの日までとなった。
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「雑草軍団」は何一つ諦めていなかった。0-6で迎えた9回、先頭の近藤が左前打で出塁。続く薮田も左前打で無死一、二塁。アルプスから、6年前と同じ巨人のチャンステーマ曲「Gフレア」が響き、手拍子が甲子園を包む。空気が明らかに一変した。打席には途中出場の中嶋。「負ける気がしなかった」。4球目、外角直球をはじき返し、一、二塁間を破った。「歓声がすごくて…。どこからでも聞こえるような。楽しかったです」。右手を突き上げ、大歓声に応えた。
攻撃は止まらない。無死二、三塁の場面で、相馬が左犠飛で2点目を挙げた。大歓声の後押しも受け、相手に重圧をかけた。失策と適時打でさらに点差を2点縮めた。あと1歩というところまで追い詰めた。中泉一豊監督(51)は「諦めずに最後よくつないでくれた」とナインをたたえた。
2死一、二塁。一打同点、さらに逆転の場面で打席にはここまでノーヒットの主将が立った。高橋は秋田大会では18打数2安打と不調。甲子園に向け、バットのヘッドを顔の前に落としてタイミングを取っていた構えから、頭の後ろに置く構えに変えた。「それから感覚がいい。バットが素直に出てくるようになった」と語っていた。
カウント1-2から外角低めの変化球に合わせるも、力なく上がった飛球は二塁手のグラブに収まった。一塁へ走りながら天を仰いだ。「小さい頃から、甲子園でヒットを打ちたいと思いながら野球をやってきた」。敗戦と、夢がかなわなかった悔しさから、試合後は涙があふれた。
それでも「負けたんですけど、本当に楽しかったです」と言える。現在、同校コーチを務める兄佑輔さん(23)は、18年夏の準Vメンバー。兄と同じ舞台に立ち、降り注ぐ歓声を味わった。「選手の力はもちろん、応援してくださる皆さんの声援が本当にすごくて、それが背中を押してくれたのかなと思います」。最後は主将らしく、猛追した仲間と、支えてくれた応援に感謝した。
今春県大会は初戦敗退も、ノーシードから甲子園までたどり着いた。先輩たちは、後輩たちに「頑張ってほしい」と口をそろえる。エースの吉田を始め、先発メンバー3人が下級生。先輩の期待を背負い、「雑草軍団」は何度踏まれても立ち上がる。【浜本神威】
○…武藤一斗内野手が1年生ながら、攻守に躍動した。4回裏無死、三遊間への難しい打球を好捕。甲子園をどよめかせた。6回2死では積極的な守備で打球を前にはじき失策も、次打者の遊ゴロを冷静に処理。打っては9回1死二塁、中前適時打で4点目。「緊張したが、大歓声の中で試合ができて楽しかった」と振り返った。
○…中泉監督は「今日は目立ってボール先行だった」と、吉田の大舞台での投球を振り返った。まだ2年生の右腕について「今日の試合が彼にとっての分岐点、成長出来るかどうかというところの試合だと思う」と今後の成長に期待した。吉田を7回で降板させて、8回からは花田をマウンドに送った。「先のことを考えて、打線に懸ける思いで3年生投手に託しました」と継投の意図を説明した。
▼相馬英典捕手(3年=2投手をリード)「吉田の状態は悪くなかった。1球分低ければ、内野ゴロに抑えられた球もあった。自分がもう少し、吉田を引っ張ってあげられればよかった。1球の重みを感じました」

