さわやかでハキハキと話し、時には笑いも誘うドジャース前田健太投手(31)。そんな男の芯には、マウンド上で見せる力強い表情と同じように、不退転の覚悟がある。

シーズン最終盤の9月。3年連続で中継ぎへの配置転換を言い渡された。本音を言えば、「納得できない部分はある」。もどかしい気持ちを支えたのは、“先発マエケン”の魂だった。

「誰だって切り替えるのは難しい。逆にすぐ切り替えるのも、よくない。捨てないといけないものもあるだろうけど、自分の仕事にはプライドを持って取り組むべきだと思うので」

中継ぎできっちり仕事を果たしている。レギュラーシーズンでは4年間で5勝3敗、防御率3・19。今季もプレーオフ4試合で、4回2/3を投げ防御率0・00の盤石ぶり。抜群の成績ながら、「中継ぎとして結果を出して、それで満足していたら自分の成長は止まると思っている」と言う。根底に強い気持ちがあるから、好成績にも慢心しない。

「僕はずっと先発としてやってきた。先発ができなくなったら、辞める時だと思っているので」

先発ができる能力がなくなれば、一線を退く決意で野球を続けている。

感じることがあった。ブルペンで何度も肩を作る経験をしたことで「先発なら早い回で降板しないこと。そういう投手だと中継ぎも不安。しっかり長い回を投げてバトンを渡すのが大事だと、より思うようになった」。過去の自分を省み、先発の心得を再確認した。

普段はリリーフ陣とともに練習する機会も少ない。「話せなかったピッチャーともコミュニケーションがとれるようになった」とプラスもあった。それでも、チーム全員で目指したワールドシリーズ制覇は今年もかなわなかった。「改善するところは明確に見えている」。先発として返り咲き、来季こそ1年間、最後までローテーションを守る。言葉の裏の思いが、にじみ出ていた。