阪神島本浩也投手(22)がプロ初登板を無失点で飾った。ヤクルト戦の6回からマウンドへ。7回には4番雄平を空振り三振に斬るなど2回1安打無失点だ。育成契約を結んだ虎戦士としては初めて開幕メンバー入りを果たした左腕。サクセスストーリーが始まった。

 これまでの道のりを考えれば、ちっぽけな壁だった。島本は「やっとスタートラインに立てた」と言った。3連戦で苦しめられ続けた男の膝が曲がる。2イニング目の7回。先頭打者は4番雄平だった。前夜までの2試合で8打数6安打1本塁打と大爆発の強打者を、推定年俸420万円の左腕が斬った。

 島本 一番いいボールがいきました。自分のピッチングをすることだけ考えて、向かっていきました。

 カウント1-2からの5球目。腕を振り、落差を増した外角の1球に雄平のバットは回った。空振り三振。2回1安打無失点でデビューのマウンドを終えた。

 開幕前は対外試合12試合連続無失点。迷いなく進む15年の自分を半年前には想像もできなかった。昨年10月。2軍の若手が実戦経験を積む「みやざきフェニックスリーグ」のメンバーに名前がなかった。途中で声がかかっても落ち着かない。育成4年目。同期入団の仲間が戦力外通告を受ける状況での不安だった。宮崎では最後のチャンスで2試合9回無失点。それでも途中帰阪を告げられると「やばい」とクビを覚悟した。告げられた支配下登録を予想すらできなかった。

 島本 ずっと3桁のユニホームで練習に行くのも恥ずかしかった。2桁の選手と3桁の自分と何の差があるのか考え込みました。

 支配下登録の期限は7月いっぱい。昨年7月31日には久保2軍投手チーフコーチから「11月の契約更改でもあるから頑張ろう」と言われ、折れかけた気持ちを再起させた。

 島本 最初のイニングは結構緊張しました。2イニング目はしっかり腕が振れました。

 自らの左腕で道を切り開いた。中西投手コーチは「そうなるやろうな」と左腕1番手として、今後の勝負どころでの起用まで示唆した。試合後も虎党の祝福は続いた。プロとして1歩目を刻んだ舞台は、ドラフト指名から1617日後に用意されていた。【松本航】

 ◆島本浩也(しまもと・ひろや)1993年(平5)2月14日、奈良県生まれ。福知山成美から10年育成ドラフト2位で阪神入団。昨季は2軍で17試合に登板し1勝3敗、防御率3・40。昨年オフ支配下登録された。176センチ、67キロ。左投げ左打ち。

<阪神に育成入団し1軍デビューした選手>

 ◆バルディリス(内野手=08年)堅実な守備と好打を買われ、シーズン中に昇格。09年退団後、オリックスに移り13年91打点とブレーク。14年からDeNA。

 ◆野原祐也(外野手=08年育成1位)2軍でクリーンアップを打つまでに成長し、09年7月に支配下へ。泥臭いプレーで1軍メンバーに刺激を与えた。

 ◆田上健一(外野手=09年育成2位)俊足を買われ10年3月に支配下登録。今季は開幕1軍を勝ち取り、代走で2試合に出場。

 ◆ザラテ(投手=10年)191センチから投げ下ろす左腕。12年2軍で防御率1・35の好成績で昇格も、1軍通算4試合で3ボークと乱れた。