巨人戦1000敗の夜、虎にも前を向ける材料はあった。開幕から停滞気味だったマット・マートン外野手(33)が12打席ぶりの快音を響かせ、2安打3打点と復調した。ストッキングを膝下から見せるスタイルで気分転換。ポイントゲッターがきっちり宿敵に牙をむいた。今日の3戦目、勝ち越して週明けの甲子園開幕へ弾みをつける。
いつものマートンが帰ってきた。体も心も万全だった。甘いボールが来れば捉えるだけ。2点リードされた6回1死二、三塁。真ん中内寄りに入ってきた144キロに全身の力を伝えた。
「球が速いピッチャーだったので、真っすぐに遅れないように意識したよ。バットを直線で出すのはいつも意識していることだね」
苦しめられた初顔の左腕ポレダの速球にも打ち負けなかった。右翼に飛んだ打球は、亀井のジャンプのさらに上を行った。フェンスにぶち当たる間に2人の走者は悠々とホームイン。同点の2点二塁打に塁上で珍しく5回手をたたいて喜んだ。勝利への希望をつなぐ1本に、この日一番の六甲おろしが左翼スタンドから流れた。
「相手にいいピッチングをされたことも多かったけれど、打てる球を打てないことも多かった。ボールに手を出していたので、しっかりストライクを狙っていったよ」
ここ最近はいつものマートンではなかった。この日の試合前もフリー打撃では打撃投手のボールを豪快に空振り。首をかしげ、ベンチに戻った。4回に左前適時打が生まれるまで、11打席連続無安打が続いていた。最ももどかしさを感じていたのは自分だった。1安打目で吹っ切れた。
気持ちが整理されれば、もう安心だ。フィジカル面では打てる要素が整っている。マートンの隠れた武器に跳躍力がある。垂直跳びの数値はなんと約80センチ。NBA選手の平均が約70センチと言われる中で屈強さを見せる。公式には99キロながら現在は3桁に乗る体重。その巨体で跳び上がる下半身の力があるのだ。球団トレーナーが「若い選手に見習ってほしい」と話すように、日課はカレンダーとのにらめっこ。遠征予定を調べ、事前に筋力を維持するスケジュールを組み立てる。土台となる下半身の強みは少々のことでぐらつかない。
打撃不振からのリフレッシュも兼ね、試合にはズボンの裾を上げるオールドスタイルで臨んだ。「143試合は長いから、たまには変えて楽しむのも1つかなと思ったんだ」。昨季の首位打者には1年間の活躍が求められる。巨人戦1000回目となった敗戦も、5番の復調があれば収穫大だ。【松本航】



