ルーキーが阪神戦1001勝目を飾った。巨人ドラフト3位高木勇人投手(25)が、2安打完封勝利を成し遂げた。9回2死まで1安打に抑え、二塁すら踏ませない完璧な投球を披露。初登板初勝利した3月29日のDeNA戦に続き、2連勝。初登板から2戦目での新人の完封は、2リーグ制後は球団最速。新人の開幕2連勝は10年ぶりで、完封も11年の沢村以来と記録ずくめだった。準備を怠らずに実力を発揮し、伝統の一戦の新たなページを開いた。

 高木勇はビクともしなかった。9回2死から、二塁打と四球で一、二塁。1発が出れば同点の場面でも、落ち着いていた。坂本から声をかけられ、ニッコリとほほ笑む。唇をペロリとなめ、西岡との勝負に向かった。「1人1人、1球1球投げた」。きっちり遊ゴロに打ち取ると、グラブをたたき、ほえた。

 阿部とは初のコンビだったが遠慮しなかった。7回に4番ゴメスを迎えた際、阿部のサインに首を振った。カットボールを選択し、二飛に打ち取った。直球の球速は決して速くないが、どの変化球でもストライクが取れる制球で、阪神打線を幻惑させたことが2安打完封につながった。

 「準備」を怠らない男だ。試合開始の5時間半前、午前8時半。まだ暗がりの東京ドームで、たった1人、マウンドに上がった。足場をならし、いないはずの打者をにらんだ。「登板の日は毎日やっています。投げるための準備です」。左足を踏み出す位置の硬さを確認すると阪神打線をイメージ。シャドーで“第1球”。スイッチを入れた。

 念には念を。準備は幼いころから、習慣となっている。野球などの荷物の準備は前日に必ず終えた。小学生のころから、練習開始1時間前にはグラウンドに行った。父泰樹さん(65)は「昔から準備はしっかりする子供だった。野球では1回も遅刻をしたことがない」と振り返る。プロに入っても、何一つ変わっていない。

 そんな高木勇ですら、ライバル相手の快投は想像もつかなかった。昨年11月22日、新人入団会見の前夜だった。イルミネーションを楽しむカップルにまぎれ、高木勇は東京ドームの周りをランニングした。突然、23番ゲートの前で足を止めた。緑色に光る「TOKYO DOME」の文字をじっと見つめた。「大歓声の中で勝てる日が来るのかな」と、つぶやいた。わずか5カ月後。入団前はイメージすらできなかった瞬間を、現実にした。

 開幕から2連勝で2度目のお立ち台に上がると、満員のスタンドから高木コールを浴びた。「自分らしい投球を引き出してくれたのが阿部さん。野手に助けてもらってできた」と感謝も忘れなかった。前日まで12球団最下位の防御率に苦しんだチームを新星が救った。【細江純平】

 ▼高木勇がプロ初完封勝ち。巨人ルーキーの完封勝ちは11年10月8日沢村(1安打)以来になる。巨人はまだ9試合目。開幕から10試合消化しないうちに完封した巨人の新人は1リーグ時代の36年秋に沢村(開幕戦)と前川(5試合目)39年中尾(9試合目)といるが、2リーグ制後は高木勇が初。59年伊藤の13試合目を抜き、2リーグ制後のチーム最速となった。巨人の新人で初登板から2戦2勝は39年中尾、57年藤田(3戦3勝)60年青木(4戦4勝)00年高橋尚(3戦3勝)05年野間口に次いで6人目。

 ▼高木勇はドラフト3位で入団。ドラフト制後、巨人の新人で完封勝ちを記録したのは8人目だが、過去7人の順位は1位が6人で03年木佐貫が自由獲得枠。1位、自由獲得枠の最上位指名以外ではチーム初の完封勝ち。