甲子園の魔物…で片付けるわけにいかない。中日ラウル・バルデス投手(37)がほぼ手中にしていた来日初勝利が、悲劇に変わった。1点リードの9回2死一塁で降板。だが、福谷浩司投手(24)と又吉克樹投手(24)が逆転サヨナラを許した。左腕は8度目の先発でも白星をつかめなかった。6度目の挑戦だったビジター勝ち越しも失敗。今季初めてフル出場した谷繁兼任監督は、福谷の一時的な配置転換の可能性も示した。
又吉はマウンドにうずくまって動けない。両目を充血させていた。ベンチで笑みを見せながら応援していたバルデスも、その瞬間は顔の色をなくした。
バルデスに勝利を-。8度にもわたる全員共通の願いはまた打ち砕かれた。福谷へのスイッチが結果的に運命を分けた。
2-1の9回もバルデスは続投。簡単に2死をとったあとゴメスに中前打を許したところで完投目前の左腕に代えて、ベンチは抑えの福谷投入を決断した。だがストライクが入らない。連続四球で満塁とされ、又吉がマウンドに向かったが1度傾いた流れはもう変えられなかった。代打関本に押し出し四球、続く新井にサヨナラ打を中前に運ばれた。
バルデス続投の方が自然だったのでは…。自らマスクをかぶっていた谷繁兼任監督は継投を説明した。
「福谷はこの前、ああいう形で失敗していたから。あと1人というところで出して、何とか(最後を)任せようと思った」
福谷は前回登板の2日DeNA戦(ナゴヤドーム)で、9回2死走者なしから5連打、4失点の大逆転を食らっていた。指揮官は「今年はそういう形でスタートしたから」と又吉、福谷で逃げ切る形を固めようとしてきた。前の悪夢を早く払拭(ふっしょく)してほしい-。その一念で送り出した。当然、128球を投げていたバルデスの限界も踏まえての継投だったが、今の守護神にとっては1つのアウトでも重かった。
バルデスは8先発のうち、7度目のクオリティスタート(6回以上、自責3以下)。防御率2・45なのに0勝3敗という運のなさ。救いは達観できるメンタルか。「(継投の判断は)ベンチに任せていたよ。野球は最後まで何があるか分からない。みんな一生懸命抑えようとしているんだから」。これまで同様、不満の色は一切見せなかった。
ビジター6カード目でも勝ち越しはならなかった。最下位広島は1・5ゲーム差に。しっぽに手をかけられた竜が、強さを試される局面にきた。【柏原誠】



