投手陣の思いを無駄にはしなかった。楽天嶋基宏捕手(30)がソフトバンク戦の延長12回、左翼スタンドへ今季2号となる勝ち越しソロを放った。5回までパーフェクトに抑えていた先発の則本が、7回に同点2ランを被弾。10回には松井裕が志願の続投で2イニング目を投げきるなど、熱投をその手で受け続けた女房役が、一振りで4時間33分の接戦にケリをつけた。
乗せた思いの分だけ、打球が伸びた。先頭で迎えた2-2の延長12回。嶋は打者有利の3ボール1ストライクから直球をねらい澄ました。得意の右打ちではなく、内角低めを力ずくで引っ張って左翼方向へ。なんとか届いた勝ち越し弾に、満面の笑みでダイヤモンドを回った。
手応えなんてどうでもよかった。「則本がチームに勇気を与える投球をしてくれた。今日は則本に感謝したい」。お立ち台で真っ先に出てきたのは、バッテリーを組んだ投手への思いだった。開幕投手を務めた先発則本は前日時点で1勝4敗。巻き返しの一戦で5回まで1人の走者も許さないパーフェクト投球を見せた。だが7回1死一塁、ソフトバンク李大浩に痛恨の同点2ランを浴び、この回限りで降板。「魂を込めて投げてくれた」パートナーに応えたかった。
9回を任された松井裕は、2死満塁とサヨナラのピンチを招いた内容を「ふがいない」と首脳陣に続投を直訴。連続無安打は10回2/3で途絶えたが、54球を要して2イニングを無失点で切り抜けた。10回も12回も、投手陣は三塁に走者を背負いながら踏ん張った。緊迫した場面をリードし続けた嶋も「やるか、やられるか。腹をくくってました」。真っ正面から1球1球の重さを受け止めていた。
しのいでしのいで巡ってきた打席で、バッテリー愛が生んだ大きな1発。ヤフオクドームでの今季初勝利となり、大久保監督は「本当に感動したね、今日は。人生で一番感動した試合」と目を潤ませた。この日は球場全体が“嶋カラー”でもあるピンク色に染まるタカガール・デー。ヒーローは死闘を終え「疲れましたね」とこぼしたが、最後はこう締めくくってバスに乗り込んだ。「うん、いい1日でしたね」。【鎌田良美】



