乾いた打球音に虎党の悲鳴がかぶさった。発信源は昨年までともに笑った広島新井だ。強烈なしっぺ返しに、阪神能見篤史投手(35)は視線をそらすこともできなかった。1点リードされた5回2死二塁。左中間席に1発が弾んだ。
能見 打たれたのは僕の責任なので。
捕手藤井は片膝をついた捕球体勢のまま、ダイヤモンド1周を見届けた。外角低めに投じられた138キロは、明らかな失投ではない。能見は「低め? そうね」と悔しさをかみしめる。内容的には「良好な先発」を意味する6回3失点のクオリティースタート。だが打たれたのが「走者を置いて回さないようにしたい」と意識してきた新井だった。3勝目を逃しただけでなく、広島打線のスイッチを入れてしまった。
能見 先に点を与えると、どうしても苦しくなる。
後を受けた救援陣も、猛攻にさらされた。7回。2番手高宮がピンチを招くと、3番手松田が再び新井に2点適時打を許した。8回には松田が危険球で退場し、ブルペンは火の車。9回に満塁本塁打を浴びた島本も含め、中西投手コーチは「左を抑えるために左を出して、そこをちゃんと抑えられないのは良くない。危険球? 問題外」と怒りを隠さなかった。
巻き返しを誓った4日からの甲子園6試合。1試合を残し、投手陣はすでに58本の安打を浴びた。1試合あたり11・6本の現実。藤浪で勝てず、能見でも勝てない。笑顔の新井に猛虎が受けた傷はさらに深まった。今日10日は前回登板で2軍降格危機に陥ったメッセンジャーが背水の先発。正念場が終わらない。【松本航】



