利いた鶴のひと越え! 藤浪と今季初バッテリーを組んだ阪神鶴岡一成捕手(37)が決勝弾を放った。移籍後初、2年ぶりの1号を同点の5回先頭でバックスクリーン右にひと刺し。リードでも21歳右腕の快投を引き出した。2戦連続の複数アーチと2桁安打は、どちらもチーム今季初。虎の攻撃が単調ではなくなった。

 打球の行方を見届けた成瀬がぼうぜんとしていた。それと同じくらい本人が驚いていた。5回先頭鶴岡が直球を振り抜いた。打球はバックスクリーン右に飛び込んだ。タテジマで初、2年ぶりの1発が最下位脱出の決勝弾となった。

 鶴岡 抜けてくれと思っていました。ただ、その前の打席も、後の打席も、ちょっとあれだったので…。

 豪快な本塁打についてはひたすら苦笑い。スポットライトなんて柄じゃないとばかりに多くを語らなかった。藤浪に7戦ぶりの白星をもたらし、勝利の立役者となったのはこの37歳のベテランだった。

 和田監督 (藤浪は)何とか再生しないといけない投手なんで鶴岡に頑張ってもらった。ベテランの味。まさかホームランまで打ってくれるとは(笑い)。

 苦しみ続ける将来のエースを立ち直らせるため、首脳陣は今季初めて鶴岡に“女房役”を託した。課題の左打者には序盤から内角にカットボールなどを投げさせて意識させた。中盤以降は外へスライダー、フォークを織り交ぜて封じた。

 藤浪 配球自体、すごく面白かったです。

 投手も、ベンチも、うならせる熟練のリードだった。そして、予想外の1発まで-。ただ、その打撃にもプロ20年の経験が詰まっている。練習中、鶴岡の打球はよく一塁側ファウルゾーンに飛ぶ。際どい球をファウルにする技術を磨いている。一捕手としての目線がこの世界で生き残るヒントをくれたという。

 鶴岡 自分が捕手で、どういう打撃をやられたらいやか。1球でも多く投げさせて、四球でも塁に出ること。だから、なるべく長くボールをみたいと思っている。投手も人間だから、粘っていればあまいところにくる可能性が出てくる。

 入団してから数年は打率や本塁打にこだわりもあった。だが結果が出ず、試合にも出られない。そんな時、たまにマスクをかぶった試合で最も困ったのが長距離打者よりも、宮本(元ヤクルト)、井端(現巨人)ら、いぶし銀と呼ばれる打者だった。俺の生きる道はどっちだ? そう考えてからスタイルを変えた。

 鶴岡 何年も1軍に上がれなかったから、いろいろ努力が必要だった。足りない部分が多すぎるから…。

 鶴岡のファウルには“持たざる者”の知恵と意地がつまっている。だからこそたまの殊勲弾には苦笑いを返すのだ。猛虎に差し込んだ光明の裏に“味”のある名脇役がいた。【鈴木忠平】

 ▼阪神鶴岡の決勝打は、14年の移籍後3本目で、今季初。1本目は、昨季4月30日広島戦2回に先制右前打。2本目は5月11日巨人戦2回に先制中前打を放ち、メッセンジャーをリードして1-0勝利に導いた。