巨人が、“巨匠”の「鬼メガホン」に役者が応え、後半戦初戦を制した。1点リードの8回2死一、二塁、原辰徳監督(56)は四球を与えたマシソンに代え、守護神・沢村を投入。セーブ機会のある場面では、今季初のイニングまたぎだったが、見事にピンチを“大脱出”した。「鬼継投」がはまって、連敗を4で止め、再び混セの首位に浮上した。

 「よ~い、アクション」。甲子園劇場に響いたカチンコの音が、巨人版“大脱出”の合図だった。交代を決め、ベンチを飛び出た原監督は球審を呼び寄せるために、手をたたいた。告げられた“俳優”の名は「沢村」。セーブ機会では、今季初のイニングまたぎでの登板だった。巨匠・原監督の「鬼メガホン」に、「鬼俳優」が燃えた。

 “シーン”は1点リードの8回2死一、二塁だった。悪役を演じるのは“名俳優”マートン。かつて「フォーク地獄」と称された名シーンを思い起こさせる、3球連続フォークで三ゴロに抑えた。9回も無失点で21セーブ目。「いつ行けと言われてもいいように、ベストの準備をする。(後半戦初戦で)再スタート。しっかり勝てて良かった」と振り返った。

 今季から守護神を任され、前半戦で20セーブを挙げたが、到底満足するはずがなかった。オールスター期間中、後半戦に向けた燃料補給は自宅での映画観賞だった。わずか2日で6本の映画を観賞。その中の1つが、シルベスター・スタローンとアーノルド・シュワルツェネッガーがダブル主演の「大脱出」だった。

 超有名俳優が共演した話題作。「脱獄」がテーマの映画だった。野性味あふれる名優2人が、演出する緊迫のシーンの連続。一瞬だけ野球を離れ、映像に見入った。この日迎えた大ピンチは、自らの剛腕で“大脱出”。映画の1シーンのように完璧に演じきった。直後の9回、千両役者の長野が、バックスクリーンへの1発。“怪演”で沢村投入のシナリオが完結した。

 巨人版“大脱出”のメガホンを取った原監督は「彼(沢村)は鬼。笑わないし、泣きもしない。今日笑っていたら、鬼じゃない。1回1/3、2/3は沢村だったら、1週間に4回くらいはできるでしょう」と振り返った。後半戦初戦を白星で飾って、連敗を4でストップ。“鬼継投”で再び首位に立った。【久保賢吾】

 ▼巨人が後半戦の開幕を白星で飾り、首位の座を奪い返した。セ・リーグで後半戦初日の首位交代は、巨人→阪神の10年以来5度目。巨人が後半戦初日に首位浮上は76、78年に次いで37年ぶり3度目だ。今回のように前半戦最終日に首位陥落→後半戦初日に首位奪回のケースは76年巨人に次いでリーグ2度目になる。76年巨人はチーム最終戦で優勝を決めたが、今年の巨人はどうなるか。