痛恨逆転負けで、男前V打とはいかなかった。阪神藤井彰人捕手(39)が6回に一時は勝ち越しとなる左前適時打。6番今成、7番伊藤隼が連打でつくったチャンスを生かしてみせた。ヤクルトとの第3ラウンドの今日30日は、チーム一丸の猛打再びで勝ち越しや。
藤井が粘った。白球が内野スタンドに飛び込む度、拍手が湧き起こった。4万6220人の注目を浴びて向かった6回2死一、三塁の打席。同点だった。代打も考えられたが、ベンチから期待を込めて送り出された。「絶対打ってやろう!」。ヤクルト石山相手に計5球ファウル。9球目に勝負をかけた。
結末は最大音量の拍手だった。カーブを引きつけ、振り抜くと、打球は三遊間を割った。右手はガッツポーズだった。5月31日西武戦以来約3カ月ぶりの打点は、一時勝ち越しとなる適時左前打。一塁ベース上でも激しく拳を振り下ろし、最高の瞬間を味わった。「ランディ(メッセンジャー)が辛抱強く投げていたのは、受けている自分がすごく感じていた」。最少失点で粘る大黒柱の意地を最も感じていた。
昨年7月。暑さが本格的になる時期に藤井は言った。中4日を続けていたメッセンジャーに対してだった。「こんな投手、なかなかいないよ。スーパー。あの身長から、150キロをバンバン投げてくる。バテないどころか、夏にもっとすごくなる。だからこっちがどうリードするか。感情の浮き沈みをどう支えてあげるかだね」。幾度となくコンビを組んできた。何とかしたい気持ちは、必死にバットへと伝えた。それだけに、8回の失点で相棒を降板させた責任を感じた。
「(8回は)ちょっと、いっぱいいっぱいだった。そこまでよく投げていたけれど、先頭のところでちょっと(バテを)感じた」
1点のリードを守れなかった。先頭の今浪を内野安打で出した後、最悪の結末が待っていた。1死二塁となり、2番川端に同点二塁打。3番山田には勝ち越し三塁打を許した。いずれも初球。少し前に見せていたガッツポーズは一転、ぼうぜんとした表情に変わっていた。
「負けたら一緒ですよ」
試合後、適時打の喜びは消えていた。捕手だからこその悔しさ。言葉の端々には、リベンジの覚悟がにじみ出ていた。【松本航】



