広島の4番ブラッド・エルドレッド内野手(35)が1回に先制2ランを放った。今季3勝を献上している中日八木から貴重な先制パンチ。先発前田健太(27)のハーラートップタイ12勝目を大きくアシストする4番の1発に、「1日ホームランガール」を務めた52歳の藤木淳子さんも大興奮だった。

 重苦しい空気を切り裂くような弾丸ライナーが伸びた。エルドレッドのバットからはじかれた打球は勢いを弱めることなく左翼席に吸い込まれた。

 球団企画の52歳ホームランガールが跳びはねて喜び、一塁側ベンチは歓喜のハイタッチ。マウンドでは、これまで何度も苦杯をなめてきた中日八木が肩を落としていた。

 「自分は彼と1度しか対戦していないので、いやな印象はなかった。ただうちの攻撃陣がたくさんの白星をあげていたことは知っていた」

 今季5度対戦し、1勝3敗。八木の今季白星すべてを献上していた。しかし4番のひと振りが流れを変えた。1回2死一塁、カウント2-1。「2球前の球をファウルにしたので、コンパクトに行こうと思った。振り遅れたが、しっかりいい捉え方ができた」。失投を完璧に振り抜いた。

 ネクストサークルから打席に入るまでにバットのグリップエンドに刻まれた文字が目に入る。その言葉を打席で念じる。

 「YOU CAN DO IT(お前はできる)」

 昨季、本塁打王を獲得した大砲は今年の8月下旬、本塁打数を問われ「ケガもあって試合数が少ない。それでもチーム2番目の数だ」とプライドをのぞかせた。右膝手術の影響や夫人の出産立ち合いもあって伸び悩んでいたが、ようやく本来の打撃を取り戻した。9月は6試合で3本塁打と量産体勢。自信も取り戻した。

 天敵八木をひと振りで攻略した4番の働きに、指揮官も「しっかりと捉えてくれた」と賛辞を送った。「自分の本塁打が勝ちにつながっていると感じる」。7回無失点で12勝目の前田と、投打ががっちりかみ合った。大砲の快音が反撃の合図だ。【前原淳】