コイが虎を首位から引きずり降ろした。主役は広島黒田博樹投手(40)だ。不惑右腕が熟練の技で阪神打線を封じ、8回2安打0封で9勝目。メジャー時代から6年連続2桁勝利に王手をかけた。「チームが勝ったのが一番。石原がうまくリードしてくれ、コースを間違えなかったのがこういう結果につながりました」。仕事を果たした男は充実の笑みを浮かべた。
スライダー、カットボールを軸に、宝刀ツーシームで芯を外し続けた。8回104球。広島では97年大野以来となる40歳台の完封も見えたが、9回は中崎に譲った。「自分としてはいきたかったけどチーム方針なので」。ちょっぴり未練もあったが、衰えない気迫が何より頼もしい。
すべてはファンのためだ。神宮での登板翌日の6日。三塁側フェンス越しに約15分間、サインを書き続けた。練習を終え、時間が許す限りのファンサービスだった。「ほしいと言ってもらえるのも、そんなに長くない。時間がある限り、書こうと思っています」。
少年時代の記憶がある。南海で活躍していた父一博さん(故人)に連れられ、大阪球場のベンチまで降りた。「そんなに強くはなかったと思いますよ」と笑うが、その時に書いてもらったホークスナインのサインは宝物だった。喜びの記憶は40歳になった今も心に深く刻まれている。
チームは波乗り3連勝。自力V消滅も食い止め、3位巨人に2差、首位ヤクルトにも4差と迫った。「目の前の試合を粘り強く、しぶとく戦っていく。これからも勝てる投球を心がけたい」。奇跡の大逆転へ黒田が引っ張る。【池本泰尚】
▼40歳7カ月の黒田が9勝目。満40歳以上のシーズンに9勝以上は13年三浦(DeNA)以来8人、11度目で、広島では97年大野以来18年ぶり2人目。9月は初白星で、3月から7カ月連続でコンスタントに勝利。40歳以上のシーズンに7カ月連続勝利は、48年若林(阪神=8カ月連続)に次いで67年ぶり2人目。2リーグ制後では89年村田(ロッテ)97年大野(広島)05年工藤(巨人)の6カ月連続を抜く最長記録。



