雄平外野手(31)が決めた。ヤクルトの優勝を呼び込んだ。延長11回2死一、三塁。強烈に一塁線を抜いた。左拳を突き上げた。「一瞬、サヨナラだって忘れて走ってました。無心で打ちました。本当に打てて良かった」。目には光るものがあった。今季、苦しみ抜いた男が、最後にみんなを笑顔にした。

 4番でスタートしたシーズン。だが、昨年3割1分6厘、23本塁打を放った男が、打率2割5分を切るほど苦しんだ。本塁打も8本。「こんな成績で使ってもらっていいのだろうか」と思い続けた。9月6日の広島戦。スタメン落ちした時「僕、良かったと思ってしまったんです」。消極的になっていた。

 まだ取り戻すチャンスはある、という励ましにも「取り戻そうなんて思わないです」とまで言うほどだった。だが、それは本心ではなかった。気持ちを整理して立ち上がった。「このままでは終わりたくない気持ちがあった。なんとかここから、と思ってやってました」。もう1度、必死になった。

 家では今まで野球を知らなかった奈王子夫人がスマートフォンで打撃フォームを撮影してくれた。「こうやって打った方がいいんじゃない」とジェスチャー付きでアドバイスまでしてくれようとした。その気遣いがうれしかった。宮出打撃コーチとは試行錯誤を繰り返し「シーズン中に変えるのは抵抗がある」と言っていた打撃フォームを2度も変えた。もがき続けた成果が、優勝決定打だった。

 6歳と3歳の2人の娘がいる。「翌日、学校や幼稚園があって遅くまでいられないから、あんまり球場に見に来られないけど、今日は金曜日で翌日が休みだったから来てくれたんです」。父親の晴れ姿を見せることができた。投手で入団し野手で優勝に貢献できた。野球人生からして苦労してきた男は「報われました、ほんとに」とポツリ。最低だと思っていたシーズンの景色が、一気に変わった。【竹内智信】

 ◆雄平(ゆうへい)本名高井(たかい)雄平。1984年(昭59)6月25日、神奈川県川崎市生まれ。東北(宮城)のエースで2年春に甲子園出場。02年ドラフト1位で入団。10年外野手転向。174センチ、83キロ。左投げ左打ち。推定年俸6000万円。家族は夫人と2女。