巨人内海哲也投手(33)がエースの執念を見せた。強力ヤクルト打線相手に攻めの投球を披露。白星はつかなかったが、5回途中1失点と踏ん張り、大事な初戦の勝利に導いた。開幕前の故障もあって不本意なシーズンを送ったが、大舞台で本来の粘り腰を発揮した。2位からの日本シリーズ進出へ、先発陣に頼もしい左腕が加わった。
マウンドの上で、ゆっくりと息を吸い込んだ。1回1死満塁で打者はバレンティンと、内海がいきなり大ピンチを招いた。呼吸が自然に速くなっていた。「立ち上がりは浮足立ってしまった。ちょっと緊張しました。自分じゃなかったです」。百戦錬磨のエースは冷静に息を整え、打者をにらんだ。狙い通りの併殺打に仕留めると、2回以降は平静を取り戻した。5回途中1失点を「もう気合です」と興奮気味に振り返った。
チームに恩返しがしたい。その一心だった。昨年10月15日、阪神とのCSファイナル初戦に先発し、敗れた。昨シーズンは7勝9敗ながら、菅野の故障離脱で大役を任された。その10日ほど前、目に涙を浮かべる菅野に「すみません」と離脱の無念さを打ち明けられた。「お前に最高の舞台を用意するから」と日本シリーズ進出を誓うも、阪神に4連敗。CSを突破していれば菅野が復帰できた可能性もあっただけに、「申し訳ない」と自分を責めた。
今回も、同じようなシチュエーションが巡ってきた。開幕前に左前腕部を痛めた影響もあり、今季は5試合で2勝1敗。V逸の責任を感じていた。そんな自分に、この大一番が巡ってきた。「シーズンで活躍できなかったのに、こういうところで恩返ししないと」。後先考えず、行けるところまで行った。序盤から直球は140キロ台前半をマーク。思い切り腕を振った。勝敗はつかなかったが、「チームが勝って良かった。野手のみなさんに助けてもらった」と笑った。
この1勝の意味は大きい。大黒柱の必死な姿に、仲間が奮い立った。経験と勝負強さを兼ね備える内海を、ここから待ち受ける厳しい戦いで使えるめども立った。「雑草魂」に懸けて先発を託した原監督は「初回をゲッツーで抑えたことが非常に良かった」と目を細めた。それでも内海は「自分よりチームのこと」と繰り返した。これぞ巨人のエース。最高の舞台にチームを導くべく、頼れる左腕が帰ってきた。【浜本卓也】
▼先発内海が1点リードの5回2死で降板し、合計6人が登板。CSで巨人が6投手のリレーで勝利は10年1S第2戦に次いで2度目。プレーオフ、CSで先発投手が4回2/3で降板は6人目だが、過去5人はビハインドで降板の敗戦投手。リードチームが、勝利投手まであと1人の先発投手を交代させたのは初めてだった。



