伝説の4番打者が復活した。阪神金本知憲監督(47)が2日、高知安芸キャンプのブルペンで指揮官として“初打席”に立った。リリーフ候補・歳内の投球練習中、バットを構えると真剣勝負を演出した。「ホームランや!」と制球の甘さに一喝するなど厳しい言葉を連発。セットアッパー候補として期待される右腕に安藤、福原に引導を渡せと指令を出した。

 ブルペンに緊張が走った。ネット越しに投球練習を見ていた金本監督がノックバットを手に、歳内の投げる打席に立った。いまだ鍛え抜かれた肉体。背番号「6」。威圧感のある構え。猛虎の誇る主砲がよみがえったような雰囲気だった。

 歳内が決め球のフォークを投げた。じっくり見送って、言い放った。

 「振らん、振らん!」

 やや甘くなった直球にはばっさりとひと言。

 「インコース真っすぐ、ホームランや」

 さらに際どく狙う歳内に対して、重圧をかけた。

 「フォアボール!」

 「2打席連続フォアボール!」

 「ドあま!」

 全球、秋季キャンプのブルペンが公式戦さながらの緊迫感に包まれていた。

 「現役に戻った気分で歳内の球を見て、どうなんだろうという。変化球の軌道とかを見てね。厳しい言葉? コントロールミスとかね。甘いところボンボンきていたから。試合はもっと重圧かかるんだから。俺が立つより、試合で(ヤクルト)山田とか(巨人)阿部とかが立つ方が」

 金本監督はあえて打席に立って、重圧をかけた狙いをこう明かした。期待の裏返しだった。チームは今季も37歳の安藤、38歳の福原というベテランコンビがセットアッパーとしてフル回転した。2人を突き上げる存在がいないことは1つの課題とされている。

 「歳内は打倒福原、安藤で燃えているから。じゃあ本気の打者目線で見てやろうと。本当にこれで引導渡せるのかなと。引退祝いを持って行けるように頑張れよ、と。自分でお祝い袋を用意してね(笑い)」

 もちろん、就任直後に安藤、福原にハッパをかけたように、ベテランコンビがまだまだ活躍できると期待している。「引導を渡せ!」は、若手とベテラン両方に対する金本監督流のメッセージだろう。

 歳内は指揮官との対決をこう振り返った。

 「あんまり気にはならないんですけど、怖いっすね。今のところ中継ぎでいくつもりですし、安藤さん福原さんのポジションを奪っていかないと、と感じました。来年こそはアピールしていきたいです」

 若手のハートに火をつけ、ベテランを刺激し、そして、チームを活性化させる。厳しくも、前向きな、効果抜群の初打席だった。【鈴木忠平】