地位が人を育てるとは、よく言ったもんだ。開幕時点で育成選手だった原口文仁捕手(24)が、阪神の第97代4番に抜てきされた。捕手の4番スタメンは、田淵幸一以来、38年ぶり。安打こそなかったが8回4点を呼ぶ四球に、89代目4番の金本監督も「さすが」とにんまり。休養のためベンチスタートだった福留に代わる“顔”として勝利に導いた。
金本阪神が大胆不敵なラインアップを組んだ。球団史上初めて、育成出身の4番打者が誕生だ。第97代に指名されたのは好調の原口だ。2点リードの8回無死一、二塁。追い込まれてから2球のボールを見極め、3度ファウル。9球目の外角低め速球を見送り、堂々と一塁へと歩いていく。
無死満塁の好機を築き、一気に4点の猛攻だ。嫌らしく、しぶとい4番に金本監督も思わずうなる。「四球、さすがですね…」。7月27、28日のヤクルト戦2試合で9打点を荒稼ぎするなど大当たりだ。前夜、サイクル安打を達成した福留が休養で先発から外れ、大抜てきされた。指揮官は言う。「いま、打線で一番、信頼のある打者なので」。この日、安打は出なかったが勝負どころで貢献した。
誰も予想できない成長曲線を描く。4月27日に支配下登録され、5月の月間MVP、7月の球宴出場…。この日はついに4番だ。普段は物おじしない性格が売り。打っても浮かれず、試合後、室内練習場で打ち込む姿は何度も目撃されている。だが、この日は、さすがに武者震いしたようだ。
「(福留)孝介さんが今日は休みだった。4番と考えず、いつも通りにやろうと思った。でも、1点差で2死で回ってきたら、長打が欲しいと考えてしまう」
冷静沈着のなかに、不意にのぞかせた「色気」こそスラッガーの本性だろう。1回は左翼ポール際への大ファウルで沸かせた。打率3割3分7厘、9本塁打は立派な内容だ。金本監督もうれしい悲鳴を上げた。
「あとは原口をどこで休ませるか。捕手としても1軍としても1年生なので、これはちょっと難しいですね。年齢が若いとはいえ、初体験のことなので」
今日1日から25日間、甲子園を留守にする長期遠征に出る。金本監督は「いつか、いい流れが来ると信じていましたけど、このいい波を自分たちでつかんだままにしておかないとね。いま、ロードという言葉は死語」と言う。生き返るか、死への旅になるのか。「主砲原口」とともに上位進出を目指す。【酒井俊作】
▼原口が阪神球団史上97代目の先発4番打者として出場。捕手では、田淵幸一の78年9月2日ヤクルト戦(神宮)以来、38年ぶり。田淵は球団在籍10シーズン中(69~78年)691試合に「4番・捕手」でスタメン出場している。なお、育成契約を経ての先発4番は、原口が球団初となった。



