ソフトバンクが粘り腰で、オリックスに逆転勝ちした。9回2死から同点に追いつき、今季初の延長戦に持ち込むと、10回1死満塁から本多雄一内野手(33)が右中間へ決勝の3点適時三塁打を放った。負ければ勝率5割に逆戻りし、首位西武に6・5ゲーム差をつけられる大ピンチだったが、野手14人、投手6人をつぎ込む総力戦で白星をつかみ、貯金2とした。

 初球のフォークを振り抜いた本多の打球は、右中間を深々と破った。柳田、内川、デスパイネが次々と生還する。延長10回、1死満塁から3点適時三塁打。三塁ベース上で本多が、ベンチでは工藤監督が高々と右腕を上げ、喜びを爆発させた。

 本多は「結果としては最高。初球から強い気持ちで。高めに来たらいこうと思った」と笑った。前日(28日)、1番二塁でスタメン出場も4打数無安打。この日は高田が今季初スタメンで二塁に起用され、本多はベンチスタート。開幕から左腕対策などで川島に4度スタメンを譲ってはいたが、世代交代を含めた首脳陣の意図を本多はかみしめていた。

 9回に二塁打を放った松田の代走として途中出場。10回はこの日初めての打席だった。「前日(28日)に直球をとらえられず、納得がいかなかった」と試合前は自ら申し出て、室内で打ち込みを行った。昨年はわずか62試合しか出場できなかった。かつてのように、不動のレギュラー二塁手ではない。自分の立場の危うさを理解しながら、今年はキャンプから二塁手1本で勝負した。「2ストライクまでは振り切る」という思い切りのよい打撃で結果を出し、開幕からレギュラーを勝ち取っていた。

 好調の証拠がバットだ。本多はまだキャンプから、バットを1本しか折っていない。この日決勝三塁打を打ったバットも、オープン戦から練習でもずっと使っている。黒いバットの芯の部分は、打ち過ぎで表面がデコボコ。だが、本多は「木目が詰まって木が強くなる。これがいいんですよ」と、味が出てきたバットを頼れる相棒にしている。

 工藤監督も「(本多は)最初から振る勇気が、あのヒット(三塁打)になった。チーム一丸で絶対勝つんだという気持ちが表れた」と、ナイン全員の勝利への執念に目を細めた。9回2死まで追い詰められ、連敗寸前だった。現在、1位西武との差は工藤政権最大の5・5ゲーム差。この日も西武が勝ち、負ければまだ4月とはいえ6・5差に広がっていた。本多も「みんなで勝った試合」と口にした。チームが勢いに乗る、総力戦の逆転勝利。この1勝は大きい。【石橋隆雄】