立正大(東都大学)が環太平洋大(中国・四国3連盟)に逆転勝ちし、9年ぶり2度目の優勝を達成した。DeNAからドラフト2位指名された伊藤裕季也二塁手(4年=日大三)が、8回に今大会2号の逆転2ラン。楽天7位の小郷裕哉外野手(4年=関西)も2安打1打点で貢献した。立正大は初出場初優勝を飾った09年の第40回大会から6連勝で頂点を決めた。

打った瞬間、伊藤裕はベンチに向かって、ガッツポーズした。8回、小郷の適時打で1点差に迫った直後の1死一塁。「小郷がつないでくれた。主将として、打たないと」。小郷の足を警戒すると読み、狙いを定めた初球の直球を左翼席中段にぶっ放した。ベースを1周すると、何人かに涙で迎えられた。伊藤裕の目からも涙がこぼれた。

主将で4番の重圧を思考の転換で克服した。責任感が強く、春は自己犠牲の精神に固執。空回りし、チームも自身も低迷した。今秋は、坂田監督から「小さくならず、4番の仕事をしろ」と助言され、憧れのロッテ井口監督のような勝負強さを発揮した。リーグ戦の優勝決定戦では決勝弾を放ち、最高殊勲選手賞を受賞。今大会も初戦の九州共立大戦で決勝2ランを放った。

ソフトバンク柳田らプロでも900グラムを切るバットがトレンドの中、中日平田モデルの910グラムのバットを使用する。重さを軽くし、スイングスピードの速さで勝負する時代。だが、181センチ、96キロのどっしりとした体格、日大三で培った振る力を兼ね備える伊藤裕は西武中村らのように、重めのバットで飛距離を生み出す。

切り替えの早さもプロ仕様に成長した。6回は自身の失策から勝ち越されたが、「勝つことを考えた」と打席での挽回に集中。DeNAラミレス監督も唱える「大事なのはどう終わるか」を実践した。「素直にうれしいです。1年間、本当に苦しかった。これを糧に頑張りたいです」。涙は乾き、プロで勝負する覚悟がにじんだ。【久保賢吾】