大記録まで、あと少しだった。日本ハム加藤貴之投手(26)がオリックス9回戦(京セラドーム大阪)で、7回までノーヒットノーランを継続する珠玉の投球で2勝目を挙げた。8回の先頭打者に初安打を許し降板したが、今季最長の7回0/3を同最多となる88球で投げきった。「ショート・スターター」などさまざまな役回りをこなしながら献身的に投げ続ける左腕の、一世一代の好投で、チームは今季初の5連勝をマークした。

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加藤の表情は崩れなかった。「いつか打たれると思って、何とも思ってなかったです」。8回先頭の山足への2球目だった。外角への133キロ直球をとらえられた打球は、自身の頭上を通って中前に弾んだ。無表情で打球の行方を見つめると、悔しそうに苦笑いする西川が打球を捕っていた。あと6アウトでノーヒットノーランの偉業達成。それでも「自分の投球をすることだけしか頭になかった」。引き揚げた三塁側ベンチでは拍手でねぎらわれた。

この1週間で課題として取り組んだ成果を発揮した。「前回の西武戦はボール先行だったけど、今日はストライク先行でいけて良かった」。前回登板は制球が定まらず、カウントを悪くして痛打を食らい、5回途中5失点。フォームや意識的なことも含めて「修正できた部分」と振り返る。

後手に回った反省を生かしたからこそ、ストライクゾーンで大胆に勝負できた。「速い球があるわけでもなく、三振を取れるボールがあるわけでもないので、打たせて取ることを心がけた」。この日の最速は137キロ。スライダーやフォークに、スローカーブも織り交ぜたが、投球の軸は真っすぐ。キレが抜群で、球速以上に速く感じさせた。21個のアウトのうち10個がフライアウト。オリックス打線を手玉に取った。

「自分は任せられたところを頑張ってやっていきます」。ヒーローインタビューでは、気丈に話した。そんな献身的な4年目左腕に「シーズンが終わったら、謝るよ」と話すのは栗山監督。「あいつには、苦労をかけっぱなし」。今季はショート・スターターとして投手起用の新戦術を託すほか、第2先発や通常の中継ぎとしても起用してきた。「何でもできる加藤の良さを使わせてもらおうと思っている」。

一人一役では激戦のパ・リーグは勝ち抜けない。多彩な役回りをこなせる加藤がいるから、安定感が出てきた今の投手陣がある。指揮官も「本当に加藤さまさまです」と感謝。加藤の力投でチームは5連勝。5月の勝ち越しも決めた。順位は4位だが、首位までは1ゲーム差だ。【木下大輔】