ラインドライブの打球が中前で弾んだ。広島高橋大樹外野手(25)は、一塁へ走りながら右拳を握りしめた。

3点を追う5回2死三塁から飛びだした適時打は、プロ7年目の初打点。「ちゃんと(ストライクに反応して)打てたらいい結果になると思っていた」。8番中堅で先発し、自分を信じた第2打席。ベンチでは、同期入団の鈴木が両手を上げて大喜びしていた。

龍谷大平安から12年ドラフト1位で入団。2位が同じ高卒の鈴木だった。知名度で圧倒していたが、すぐに逆転された。あせった。打撃改造。何度もやった。プロの壁は厚かった。初出場は14年。初安打は昨年。15年5位入団の同学年、西川にもあっさり抜かれた。

昨年12月25日、一般女性と結婚した。背水の陣で臨んだ今季は、4月19日に初昇格。「誠也がライバルなんてまったく考えていない。今の僕は自分の結果がすべて。もう技術の問題じゃないんです」。悲壮な決意で臨んだが、1週間で2軍に逆戻り。6月16日に再昇格し、ついにチャンスを生かした。8回の右前打でマルチ安打もマークした。

右翼鈴木、左翼西川と94年生まれトリオで守る外野の風景は格別だった。「2人の近くにいけるようにがんばります」。残念なのはチームが連敗し、交流戦の勝ち越しが消えたこと。それでも緒方監督は「次の出番にそなえてチャンスをつかみ続けてほしい」とエールを送った。チャンスはまた、来る。【村野森】

◆高橋大樹(たかはし・ひろき)1994年(平6)5月11日、大阪・藤井寺市生まれ。道明寺東小3年から野球を始め「河南シニア」では中3でAA世界大会出場。龍谷大平安では2年夏と3年夏に甲子園出場。高校通算43本塁打。12年ドラフト1位で広島入団。14年に1軍初出場、昨季初安打を放った。181センチ、86キロ。右投げ右打ち。