最大5点差をひっくり返す大飛球が、右翼スタンドに飛び込んだ。

打った広島会沢翼は全力疾走のまま二塁ベースを蹴り、歓喜する広瀬三塁コーチを見て柵越えに気付いた。2点を追う8回、1点返しなお1死三塁で飛びだした逆転V2ラン。自力V消滅を阻止し「心は熱く、頭は冷静に。最高の結果になってよかった」とかみしめた。

正捕手だが、先発出場は88試合中60試合にとどまる。先発陣と捕手の組み合わせを優先するチーム事情のためだ。それでも、勝利打点はチームトップ鈴木誠也の7に次ぐ、2位タイの6。試合に出られない悔しさを胸にしまい、ここぞで勝負強さを見せつけた。「久しぶりにグッとくるものがありました」。

上位打線の熱い思いに乗せられた。5点を追う4回、4番鈴木が左前タイムリー。5回には1番西川が左前適時打。6回の安部の4号ソロを挟み、7回には西川、菊池涼の1、2番コンビが連続長打で4点目をもぎ取った。2点差に広げられた8回には鈴木、松山の連打で再び1点差に迫り、決勝2ランのお膳立てをしてくれた。

試合前の室内練習場には、全体練習開始前から主力が集った。鈴木がマシンを打ち込めば、西川やバティスタも快音を響かせる。これが広島のスタンダード。緒方監督は「うちらしい野球、あきらめない、いい野球をファンに見せられた」と手応えを口にした。じわりと4位に浮上。つながらなかった打線がつながり、広島が巻き返しへのきっかけをつかんだ。【村野森】