阪神福留孝介外野手(42)が、連敗を3で止める走者一掃二塁打を放った。1点を先制した5回、なお2死満塁。3点打を右中間へ運んでリードを4点に広げ、完全にゲームを支配した。これが歴代14位の日米通算2372安打で、中日時代の監督、落合博満を超える節目の1本。19日に球界最年長となる来季の契約更新が判明したベテランが、逆転CSへネバーギブアップで引っ張る。

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福留が貫禄の一撃で試合の流れを引き寄せた。5回2死満塁。木浪が押し出し四球を選び、先制に成功した直後だった。

「“青柳さん”が一生懸命に頑張っていたので、何とか追加点をと。1点だけじゃなく、どんな当たりでもヒットをと思いました」

浜口の116キロチェンジアップを捉えた打球は右中間へ。一走木浪までもが決死のヘッドスライディングで本塁にかえると、二塁ベースで両拳を強く握った。

プロ入りした中日で星野、山田、落合の3監督と出会い、常勝軍団の礎をたたき込まれた。このヒットで日米通算歴代14位の2372安打目。通算安打で選手落合を越えた。その監督のもとで4年間学んだ落合野球について、こう語ったことがある。「派手さはない、魅せる野球ではないけど、勝つことにトコトンこだわった。チームが勝つなら、(走者三塁では)ゴロを打って三塁走者がかえってくればそれでいい。それで点が入る。チームも勝てる。そういう野球だった」。ストイックなまでに勝利一徹。教わった野球道は今もブレることなく、勝利を追求する姿は変わらない。

リーグ最年長野手の42歳。ベンチでは若手の横に座って「カウンセリング」を行うことも少なくない。チーム力を底上げするために、悩める若手を徹底サポート。先発した青柳にも、左打者目線で日ごろから的確なアドバイスを送り、課題克服をアシストしてきた。

この日は試合開始7時間前の午前11時にグラウンド入り。黙々とポール間を走った。途中からは近本も参加。言葉以上に、背中でも若手を引っ張る。試合後は「負けが続いていたので、大阪に帰ってきて頭が取れたのはよかった」とサラリ。矢野監督は「やっぱり孝介だよね。あれが1番大きい。追い込まれてのあの1本は、今日のポイント」と絶賛した。3位広島とのゲーム差は5のままだが、逆転CSへ最後まで諦めない姿は心強いシンボルだ。

球団は球界最年長となる43歳の来季も、コーチ兼任でなく選手として契約する方針を固めている。強さの秘訣(ひけつ)を伝達して、勝利の喜びを分かちあう-。虎にはまだまだ、福留の力が必要だ。【真柴健】