星稜の熱い夏は終わらない。楽天島内宏明外野手(29)がロッテ戦の延長10回にダメ押しの9号3ランを放つなど、今季5度目の猛打賞を決めた。母校の石川・星稜高が甲子園で準V。後輩たちの奮闘を刺激に、OBとして混戦のパ・リーグで存在感を示す。

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島内がとどめを刺した。延長10回に1点を勝ち越した直後、茂木が申告敬遠で2死一、二塁となって打席へ。「前の打者が敬遠されるのは、たぶん初めてだと思う。敬遠されると思ってなくて、慌てて打席に入りました」とおどけたが、ロッテ南との勝負はしたたかに制した。フルカウントからフォークもマークしなければいけない状況で、内角高めの142キロを逃さない。平石監督も「1球で仕留めた。大したもの。あれは島内の勝ち」とうなった。

試合前、決勝で惜敗した後輩たちの姿を目に焼きつけた。「最後まで高校野球をやれたわけですから。頑張った結果の準優勝。おめでとうございます、ですよ」。奮闘をねぎらいつつ、自らの高校時代の思い出もよみがえってきた。「僕らが入った頃の星稜は弱かった」。当初は県内のライバル校である遊学館へ進むことも考えていた島内を導いたのは、当時部長を務めていた林和成監督だったという。「僕の中学にも何度も足を運んでいただいた。『星稜を強くしたい』と」。熱意に打たれ、クリーム色のユニホームに袖を通した。3年夏には甲子園にも出場。プロでレギュラーを張る男の原点となっている。

8月の月間打率は3割7分。母校の勝ち上がりと符合するように状態を上げ、2割4分を切りそうな時期もあった打率を2割7分6厘まで戻してきた。「いい感じで腕の力が抜けて、(投手の)左右に関係なくタイミングが取れている。悪い時期も(首脳陣に)使い続けてもらって、まだその期待に全然応えられていない。星稜(の後輩)にも刺激をもらったので、今度は自分たちの番ですね」。シーズンの佳境で先輩の意地を見せる。【亀山泰宏】