ヤクルト中村悠平捕手が攻守に踏ん張った。1点を追う5回2死満塁、これ以上ない場面で代打がコールされた。

カウント1-1からの3球目。阪神ガルシアの低めチェンジアップをすくって三遊間を割った。「すごくいい場面で使っていただいた。打点を挙げようという強い気持ちだった」と殊勲の逆転打を振り返った。

捕手中村にとって「本番」はその後とも言える。勝利投手の権利をブキャナンに贈ってマスクをかぶった。「打ったことよりも、その後を抑えられたこと。チームが勝ったこと。それが一番です」。試合前、スターティングオーダーに名前はなかった。8月に入り、巨人3連戦で大量被弾するなど、単調になっていたリードとバッテリーミスが反省材料になっていた。

6回も続投したブキャナンは変化球中心に。継投した4投手も内外に散らして、5連勝中の阪神に捕手として1点も与えなかった。今季は点を取った直後に逆転されたり、追いつかれる試合が多かった。「捕手としてもどかしさがあった。それは今後もつきまとうけど、どうチームを勝たせられるかを整理していきたい」。打つだけでは満足しない。打って、抑えて、中村は勝利の立役者になった。【鎌田良美】