「マスターズ甲子園2019」が9日開幕し、初出場のPL学園(大阪)はエース桑田真澄氏(51=野球評論家)が投打に大活躍して利根商(群馬)戦の逆転勝ちを導いた。

選手宣誓の大役を務めた右腕は4回に登板し、1イニングを2安打無失点。その後4番遊撃に入り、追加点を呼ぶ右越え二塁打を放った。1985年(昭60)夏の決勝以来、聖地で34年ぶりに復活した「PL桑田」に大歓声。伝統の人文字応援もバックに、桑田劇場が魅了した。

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左足を大きく上げるダイナミックで、柔らかいフォームは、34年の時が流れても色あせない。「50歳過ぎて五十肩もあって思うようには動かない」。思わず苦笑いが出たが、85年日本一以来の「PL桑田」が甲子園のマウンドで躍動した。

大歓声を浴びて4回から「4番投手」に入り、1イニング限定で登板。先頭に四球を与えたが、9球目に最速の126キロをマークした。「好きなので必ず1球投げたい」と、2死から4番に投じた代名詞の99キロカーブは右前に運ばれ一、二塁のピンチ。だが「気持ちは高校生のつもりで」。次打者を124キロ直球で二飛に仕留め、1回2安打無失点。18球を投げ切った。

「高校時代を思い出しました」。予選は背番号81だったが本大会は背番号1を希望。「好きなのを選んで良いと。(僕にとって)PLは1だと思うので」。10代にタイムスリップし、青春のPL野球を楽しんだ。

5回表から遊撃に入ると、その裏の打席で右越え二塁打。元祖二刀流の打撃センスで再び、甲子園を沸かせた。さらに次打者の三ゴロの間に、スライディングで三進する好走塁も披露。岩田徹捕手(52=元阪神)の左前適時打で3点差に広げるホームを踏んだ。試合前に大会事務局からお願いされた選手宣誓も務め、「心から野球を楽しむ」と宣言。言葉通りの桑田劇場は、「KKコンビ」で沸かせたあの夏さながらだった。

5季連続甲子園に出場し、1年夏の83年に優勝投手。3年間で2度頂点に立った。通算20勝(3敗)は戦後最多で、池田(徳島)戦の水野雄仁撃ちなど6本塁打も放った。「15歳で初めて甲子園に出てこの球場に育ててもらった。次の世代にもつなげていきたい」。

今年からOB会長を務め、予選から奮闘して初参加初出場のPLを聖地に導いた。大会規定で90分限りだったが、16年夏を最後に休部中の野球部を夢舞台でよみがえらせた。「(復部へ)話し合いの場は持てるようになったし、継続していきたい」。みんなの夢と希望を背負い、これからも力を尽くす。【望月千草】

▽PL学園・清水哲監督(53) 相手が強かった。何回来てもやっぱりいいところですね。かっこいいというか、もちろんきれいですし。(今後も)挑戦しますし、毎年帰ってこられるよう頑張ります。マスターズで頑張るのはいいんですけど、硬式野球部の復活、そこが第一ですね。

▽PL学園先発の元DeNA・冨田康祐氏(最速144キロ)「先輩方と野球をするのは緊張しました。僕だけ点を取られて悔しい。いい緊張感がありながら、投げることができた」

▽桑田氏の選手宣誓 我々、高校球児OB一同は、聖地甲子園のグラウンドに立つため、世代を超え、力を合わせて戦ってきました。この大会では心から野球を楽しむため、スポーツマンシップにのっとり、フェアプレーで戦うことを誓います。

◆マスターズ甲子園 全国高校野球OBクラブ連合が主催する、全国の高校野球OBやOGが、あこがれだった「甲子園」を目指す大会。性別、世代、甲子園出場経験の有無や、元プロ・アマチュアなどの経歴に関係なく、出身校別に同窓会チームを結成して参加する。04年に第1回大会が開催され、今回が16回目。

◆マスターズ甲子園主なルール 出場選手は部員、監督など野球部関係者のOB、OGに限る。現役の大学・社会人、プロ野球関係者は出場できない。各県の予選を勝った1チームが本大会に出場。3回までは34歳以下のチームで、4回以降を35歳以上のチームで戦う。試合時間は9イニング、もしくは1時間30分で打ちきり。