「第1回阿部慎之助杯争奪国頭地区中学軟式野球大会」が25日、沖縄・伊江島で行われた。巨人阿部慎之助2軍監督(40)の野球界への提言と、沖縄本島からフェリーで30分ほどの伊江島での今後に向けた取り組みに潜入した。

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阿部2軍監督は、06年に初めて自主トレで訪れて以来、付き合いのある伊江島にいた。自身がプロデュースに関わった伊江村野球場で言った。「現役は終わってしまいましたが、今後、大きく見て野球界のために、この伊江島を知っていただいて、こういう素晴らしい施設があるということもPRして、全国から伊江島に野球チームが殺到するように、なんとかいろんなところに話をしていきたい」。瑠璃色の空と海に囲まれた島から、野球界の今後を思った。

両翼100メートル、中堅122メートル、内外野全て人工芝の球場のバックネット裏で開幕ゲームを見守った。「この子はスイングがいいよ」。1つ1つのプレーに目を光らせた。中学生に必要なことを問われると「野球に本気になることじゃない? 本気でうまくなりたいのか、本気で『プロ野球選手になりたい』と思っているのか。そういうのが大事」とアドバイスを送った。

自身の子ども時代と変わった野球を取り巻く環境について持論がある。今春センバツから1週間に500球の球数制限が設けられた。「過保護すぎるところもある。同じ野球なんだから勝手なルールは作らないでほしいな」。肩や肘の故障を防止するためという理由はわかるが、トレーニング方法も多様化した今、YouTubeやSNSで多くの情報が得られる。「その(ケガ防止の)ためのトレーニングを『もっと見たら?』ってことなんだよね」。さらには公園でキャッチボールすらできない時代になったことを憂慮。壁当てをしようものなら近所の人に怒鳴られることもある。「そういうのを変えないと野球人口は増えないと思う」と言った。

この言葉に応えるかのように伊江島では野球に集中できる環境を整えつつある。議論に挙がるのは合宿場の建設だ。現在メイン球場の他にも室内練習場があり、十分な施設がそろうが、周辺の宿が足りない。学生が泊まるには高価なリゾートホテル以外は民宿で「3食用意することなどが困難」などの問題がある。球場周辺に合宿場があれば-。問題解決に島民も奔走する。

ダウンジャケットを着ていた東京から直線距離で1600キロ。半袖でも汗が止まらなかったのは気温のせいだけではない。そこには阿部2軍監督の熱い思いがあった。伊江島が野球界のアイコンとなる日が来るかも知れない。【久永壮真】