勝利の福玉を投げる! 阪神近本光司外野手(25)が25日、大阪天満宮の「初天神梅花祭」で福玉まきに参加し、送球による「抑止力」アップを誓った。昨季は外野手でリーグトップの10補殺だが、今季は数より進塁を許さない抑止力にこだわる。同宮は「学問の神様」で、弓の名手とされる菅原道真を祭る。体の使い方に関して読書中の近本が、あやかって相手の脅威となる肩を目指す。

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近本が外野から矢のような送球で、走者もファンもくぎ付けにする。1年目の昨季は主に中堅で142試合に出場してリーグ最多10補殺。何度もチームの窮地を救った。しかし、今季目指すのは数、確率よりも「抑止力」のある肩だった。

「補殺が多いから評価が高いわけじゃない。確率は高めたいですけど、走られるような肩や送球じゃなくて、走られる前にランナーコーチが止めるような守備をしたい」

全く走られないことを究極の理想とし、具体的には「チャージが一番大事。そのためには守備位置が大事」と改善点を挙げた。イメージしたのは同学年の強肩外野手。「やっぱり(広島)鈴木誠也。本当に(走者が)ちゅうちょする部分は多いのかなと思います」。その肩が相手チームの作戦面にも影響を及ぼしていると感じた。鈴木の補殺数は17年の10が最多で、8、6と年々減少。強肩を警戒した走者が進塁をあきらめる場面もあり、裏返せば抑止力が働いていたとも言える。

大阪天満宮の福玉まきでは優しい「送球」を心掛けた近本にとって、あやかりたいのが祭られている菅原道真だろう。弓で百発百中の腕前を持つとされた。そんな精度が備われば、相手の脅威になるのは間違いない。今オフは「いろんなことをちょっとずつ勉強していきたい」と多方面から野球にアプローチしている。その1つが読書。今は「究極の身体」(高岡英夫著)で体の使い方を勉強中だ。「それがどう(プレーに)つながるかは分からないですけど、意識してトレーニングだったりはやっています」。筋肉より骨格に焦点を当てた内容で、自分の体について理解を深めている。他にも1軍キャンプ地の沖縄・宜野座に持ち込むつもりで「学問の神様」の前で向上心をのぞかせた。

約2500人のファンに福玉を投げ込んだ近本は、チームのリーグ優勝、日本一も祈願した。「今年みんな(ファン)がいい笑顔になれるように、またなるように。頑張りたいと思います」。今度はその左腕で、勝利を呼び込む。【奥田隼人】

◆菅原道真(すがわら・みちざね)845年(承和12年)生まれ。出生地は京都、奈良、大阪など諸説ある。平安時代の学者、政治家。醍醐天皇の時代に右大臣になるが、無実の謀反のかどで大宰府へ左遷。同地での死後、京で朝廷要人の死去などが続き、その霊が怨霊と恐れられ、鎮めるため北野天満宮が建立された。京を去る前に読んだ「東風(こち)吹かば匂ひおこせよ梅の花主なしとて春を忘るな」という歌は有名。