ベテランから新人へ受け継がれていく「鳥谷の教え」

  • 打撃練習を行う岡崎太一(2019年3月2日撮影)

<酒井俊作記者の旬なハナシ!>

高知でいい話に触れた。練習後の安芸ドーム。阪神のルーキー勢が座ってノートにペンを走らせている。新人8選手全員が2軍キャンプなんて珍しい。フレッシュさがあふれるなか、さりげなく存在感を示しているのがプロ16年目の岡崎太一だ。

2軍メンバー最年長の36歳には、このキャンプでこんなことがあった。トレーニングルームで体を動かしていると話しかけられた。「打撃で上体が前に突っ込みやすいんです。どうしたらいいですか」。ふと見るとドラフト4位の18歳、遠藤成だった。物おじせず質問され、岡崎が伝えたのはトレーニング法だった。「自分も(打撃の)同じようなところを意識していて。オフにやった練習を」と話し、振り返る。

「いかに丹田(へその下)に力を込めるか。横隔膜を下げるのを意識するのは難しいのですが『肋骨(ろっこつ)が上がらないように、開かないように』と。上がってしまえば、肩も上がってしまいますから」

中腰でバーベルのシャフトを上下させるトレーニング法を紹介した。横隔膜や肋骨を下げるのは腹圧を高め、上体が浮かないようにする意識付けだ。そういった説明もしたのだという。

動きのなかで、もっとも力を発揮しやすいパワーポジションがある。岡崎も理想的な動作を追い求めるなかで、体の仕組みや動きのからくりを学んできた。

「酒屋さんの前掛けってありますよね。あれって酒が(服に)付くから着けているわけじゃない。重いモノを持つとき、前掛けをギュッとひもで縛る。モノが持ちやすくなるからです」

丹田や腹圧の大切さを示す例だが、岡崎が昨季までの同僚だった鳥谷敬から教わった話だという。長く野球をするために誰よりもストイックに体と向き合ってきた、誰もが認める鉄人だ。鳥谷が岡崎に伝えたことを、岡崎が遠藤に伝える。ベテランしかできない役回りだろう。岡崎は心意気たっぷりに「年も倍くらい違うのに、普通だったら聞きにくいと思いますけどね。トリさんから教わったことも、聞かれれば惜しみなく伝えます」と言った。

高校通算45本塁打で甲子園を沸かせた遠藤は「体幹トレの方法を教えていただきました。ありがたいですね」と感謝した。何よりも自ら教えを請う、遠藤の志の高さがにじみ出ていた。

この話には続きがある。トレーニングルームでの岡崎と遠藤のやりとりが、たまたま聞こえてきた新人がいた。「肋骨を1本ずつ動かすなんて、初めて聞きました。そういう細かいところまで意識してやられているから、長く野球選手でいられると思いました」。甲子園3発のドラフト2位井上広大は目を輝かせる。わがことのように貪欲にヒントを拾っていた。このたくましさが未来へとつながる。(敬称略)