阪神は26日、藤浪晋太郎投手(25)が嗅覚の異常を訴え、近日中に新型コロナウイルス感染を判別するPCR検査を受けると発表した。

日本野球機構(NPB)の球団が選手の検査受診を公表するのは初めて。3月14日に藤浪と食事をともにした2選手も「味覚障がい」に類似した症状を申し出ているという。球団は最低1週間の活動休止を決定し、チームは事実上の解散状態。矢野監督や選手らは自宅待機となり、目指す4月24日開幕にも大きな影響が出そうな非常事態に陥った。

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藤浪に新型コロナウイルス感染の疑いが浮上した。谷本球団副社長によると、藤浪は発熱、せき、けん怠感などの症状はなかったが、ワインやコーヒーの匂いを感じることができない「嗅覚」の異常に気づいたという。2日前の24日から耳鼻咽喉科と内科を受診。コロナウイルスの症状として「嗅覚」や「味覚」の異常が出るケースがあり、25日に再度、兵庫県内の別の病院を受診し、医師の判断でPCR検査を受けることになった。26日の時点で、陽性か陰性は分からない。

球団は藤浪との電話で、11日から25日まで過去2週間の会食や行動などをヒアリング。3月14日に、藤浪と食事をともにしている選手が複数人いることが判明した。球団は当該選手に嗅覚不全を感じた際の申し出などの注意喚起を実施。この日の朝までに2選手が「味覚障害」に類似した症状を申し出たという。同副社長は「さすがにこれだけ出てきたので、もう1度確認しようということで連絡を入れた」とNPBにも現状を報告。急きょ、予定していた2軍の練習試合・ソフトバンク戦を中止した。

阪神の関連施設はものものしい空気に包まれた。球団が藤浪と「味覚障がい」を訴えた2選手の行動履歴を確認。正午には防護服姿の業者が甲子園球場の消毒を開始した。クラブハウスや通路だけでなくブルペンも消毒が施された。独身寮「虎風荘」に入っていた寮生は、26日中に宿泊施設へ移ることも決定。午後には球団事務所も閉鎖され、球団職員は次々と帰路に就いた。球団史に例を見ない非常事態に陥った。

藤浪の検査結果を待たず、チームも一時“解散状態”になる。谷本副社長は首脳陣、選手、スタッフ、球団職員について「少なくとも1週間は自宅待機させようと思っています。簡単に言うと、次の指令があるまでは出てくるなという言い方はしています」と説明した。1軍は27日から全体練習を再開し、今後は練習試合も組む予定だったが全て白紙。2軍の練習試合も続々キャンセルが決まった。

選手も自宅待機では運動量は大きく制限される。1週間ほとんど何もできなければ、これまで作り上げた戦闘ボディーの維持は難しく、作り直しや実戦感覚の補填も簡単ではない。しかも1週間は「少なくとも」の条件付きで、今後の状況次第では延びる可能性もある。NPBは4月24日開幕を目指す方向だが、仮にその日に開幕を迎えても阪神には大きなハンデとなる。 しかも近日中に判明する藤浪の検査結果が「陽性」なら…。阪神が未曾有の窮地に立たされた。