観客が入った途端、派手な幕開けとなった。新型コロナウイルス感染防止のため無観客試合で行っていたプロ野球が10日、上限5000人の観客を入れて公式戦を開催。ソフトバンク柳田悠岐外野手(31)が楽天4回戦(ペイペイドーム)の延長10回、サヨナラの7号ソロを放った。この日は、中日ビシエド、オリックスのロドリゲスもサヨナラ本塁打。ホームチームの特権であるサヨナラ弾の同日3本は史上3度目。声援が後押しとなる証左となった。ソフトバンクは福岡ドーム時代から本拠地1000勝を達成した。

両手に確かな感触があった。1-1の延長10回。柳田は振り切ったバットを握ったまま、打球が飛んだ中堅方向を向いた。観客1839人が一斉に立ち上がる。柳田はバックスクリーン左で打球が弾む前に右手でガッツポーズを作った。シャギワの高めを仕留めるサヨナラ弾。「有観客開幕戦」で主役を演じた。

柳田 拍手もあって、選手たちはいつも以上に引き締まったと思います。うれしいです。

「ギータ!」の声援が飛び交う中、お立ち台で笑顔を見せた。「豪雨被害で大変な時期。自分は野球をするだけです。少しのファンしか球場に来られないですけど、テレビの前のファンのためにもいいプレーするだけです」。今年初めて公式戦で本拠地に足を運んだファンから、さらなる拍手が起きた。

楽天に大量失点で連敗していた。柳田は8日は2発を放つも打ち負け、9日は4打数無安打。悔しかった。この日も先発則本昂に2打数無安打2四球。逆襲の時を待っていた。「甘い球だけはしっかり打てるように。後悔だけはしたくないですから」。2回に今季初の先制弾を放ったベテランへの気遣いも忘れなかった。

柳田 松田(宣)さんが一番喜んでました。「オレはやっぱりプロ野球選手や」と言ってました。真のプロ野球選手だと思います。ボクは必死にやってるだけです。

93年に福岡ドームでスタートした球場で、積み重ねてきた勝利数が1000となった。試合前、王球団会長が隣接する施設に移転した「王貞治ミュージアム」を内覧し、チームの変化を“予言”していた。「ファンの反応や、熱気を感じられるのは本来のペース。選手たちは別人のように張り切ってやってくれる」と話すと、同行した城島特別アドバイザーも「お客さんが入って日常に戻る。ホークスも1つギアが上がると思う」と期待していた。

柳田 お客さんあってのプロ野球選手。一生忘れることはないです。

7月中旬になって、ようやく実現したファンの前でのプレー。「早くファンの前でホームランを打ちたい」。柳田の熱い思いは、140キロをはね返した推定飛距離135メートル弾となって、ファンの心に刻み込まれた。【浦田由紀夫】

▽ソフトバンク工藤監督(今季初の有観客試合で柳田のサヨナラアーチでの球場1000勝に) 多くの歴史を作った監督の方々の中に自分も入れてうれしい。ファンの拍手もあって身震いもあった。感動する試合でした。これで乗っていかないといけない。柳田くんも良く打ってくれたし、松田くんは、やはりお祭り男だなと思いました。