広島の新助っ人ホセ・ピレラ外野手(30)が中日戦(ナゴヤドーム)で大暴れし、記録的大勝を導いた。

1回表に来日初の初球先頭打者弾で打線を活気づけると、球団34年ぶりの1イニング11安打を記録した3回にも左前適時打で一挙9得点を呼び込んだ。最下位転落危機にあったチームを23安打19得点と勢いづけ、自身も一気に上昇気配だ。

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ピレラは三塁ベースを回ると、ドヤ顔で両手をすり合わせて頭上に向けた。カープファンの拍手音をBGMに、謎の「手裏剣ポーズ」を何度も決めた。

「あれは長野さんがやり始めて、それがはやったから自分もやっている。意味? 把握していないよ」

ポーズ完成の背景なんて気にしない。仲間と、ファンと1つになれるだけで満足だ。「米国時代に3A、2Aで経験したことがあるよ」と明かした得意の!? 初球先頭打者弾を放ち、打線を一気に活性化させた。

前日10日は大黒柱の大瀬良を先発に立てて延長10回サヨナラ負け。ナイター明けのデーゲーム。冗談抜きで目が覚める弾丸ライナーだった。「初回は塁に出ることだけを考えている。そういう思いで積極的にいったんだ」。1回、右腕勝野が投じた真ん中149キロを強振。左中間席に先制の3号ソロを突き刺した。負ければ最下位転落の可能性もあった一戦。嫌な流れをひと振りで吹き飛ばし、チームを23安打19得点の大勝に導いた。

本能のままプレーしている様に見せて、実は「野球偏差値」が高い。7月1日の神宮ヤクルト戦。頭脳が際立つシーンがあった。4回の攻撃。1死から9番K・ジョンソンが凡退して2死になると、時間稼ぎに入った。1度入りかけた打席から離れ、バットにスプレーをかけ、スイングしてゆったり。主審に促されて打席に立った後も、ジョンソンがキャッチボールを再開するまでスイングしなかった。自分を犠牲にしてでも投手に休養を-。類いまれな状況判断は大きな武器だ。

この日は相手先発が今季初登板初先発と見るや、ストライクを欲しがる可能性が高かったゲーム初球を一閃(いっせん)した。打線がつながりを見せていた3回は1死一、二塁から丁寧に振り抜き、左前適時打で5点目をゲット。34年ぶりに球団最多に並ぶ1イニング11安打も呼び込んだ。「アグレッシブに打席を積み重ねて、打つべき球を打つ。それが結果につながる」。情熱と冷静を巧みに使い分けられる。カープの新1番は頼もしい。【佐井陽介】