困難を乗り越え、1つ目の白星を刻んだ。楽天ドラフト3位の津留崎大成投手(22)がプロ初勝利を挙げた。

4日、ソフトバンク7回戦(楽天生命パーク)の2点を追う8回から登板。1回を2奪三振無失点に抑え、直後の浅村の逆転2ランなどで白星が舞い込んだ。慶応高3年時には両腕を手術。慶大時代のサイドスロー挑戦、筋力トレーニングに没頭などの曲折を経て、まばゆいフラッシュを浴びた。

   ◇   ◇   ◇

5年前の夏、津留崎はベッドの上にいた。慶応高3年時。県大会直前の練習試合での投球練習中「ブチッ」と音がした。「あ、終わったな」。右肘の痛みがとれなかった。本番は投手ではなくクリーンアップを担い一塁手で出場。だが8強をかけた試合でヘッドスライディングした際に左腕を2カ所骨折。左腕を手術後、10月に右肘のトミー・ジョン手術を受けた。「もう投手はできないのかなと思いました」。

筋肉が世界を変えた。カブス・ダルビッシュの記事を見つけ、基礎筋力を鍛える筋力トレーニングの重要性を知った。ボディービルダーのメニューを参考に週6度。試合で投げ始めたのは17年3月。1年半の空白を取り戻しにかかった。

だが簡単にはいかない。大学3年時、上手投げからサイドスローに挑んだ。「右の速球派は多かったので、周りを見渡したらサイドがいなかったので。でも全然ダメ。2、3カ月で諦めました」。ドジャースのビューラーらを参考に小さなテークバックを身につけた。気づけば最速は筋トレ開始前から9キロアップの153キロ。プロの扉を開いた。

失うものは何もない。誰が相手でも、がむしゃらに元気な右腕を振る。この日は2点を追う8回から登板。バレンティン、今宮からいずれもカットボールで空振り三振を奪った。気づけば白星が舞い込んだ。「僕だけの力ではなく、先輩方が逆転してくれたおかげ。ベンチで迎える時はうれしかったです」。三木監督、浅村からそれぞれ肩に手を置かれ、にっこりとカメラへ記念球を突き出した。病院のベッドから5年。津留崎は晴れ舞台に立っていた。【佐藤究】

◆津留崎大成(つるさき・たいせい)1997年(平9)10月10日生まれ、千葉・鎌ケ谷市出身。小1から中部ユニオンズで野球を始め、中学は佐倉リトルシニアに所属。慶応高、慶大を経て、19年ドラフト3位で楽天に入団。右投げ右打ち。身長177センチ、体重86キロ。