巨人原辰徳監督(62)が打った「妙手」が話題を呼んでいる。6日の阪神戦(甲子園)で、11点リードされた8回1死に増田大輝内野手(27)をマウンドに送った。日刊スポーツ評論家の宮本慎也、上原浩治の両氏、ベテラン遊軍の小島信行記者がクロストークで考察する。

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小島 6日の阪神-巨人戦で、11点リードされた巨人が8回1死で野手の増田大を登板させて物議を醸しています。上原さんはご自身のツイッターで“野手の登板”はOKを表明していますが、何か言い足りないことはありますか?

上原 どうもこうもないでしょ。ツイッターの通り。戦術的にリリーフ陣の負担は減る。小差のゲームで投手がいるのに野手を投げさせたなら、批判されるのは分かる。でも、そうじゃないんだから。何を言ってるの? って感じです(笑い)。

小島 宮本さんは昨日(6日)、NHKの解説で別の試合を見ていましたが、知っていますか?

宮本 放送中にアナウンサーから「阪神-巨人戦で、野手の増田が投げています」って振られたんで「原監督じゃないとできないでしょう」って答えましたよ(笑い)。でも今年はコロナで変則日程。ベンチ入りしている投手を見ても、残っていたのは勝ち試合で投げるようなメンバーだった。8回で11点差もあるんだから、やってもいい展開でしょうね。

上原 ここ数年で、メジャーでは野手の登板が増えてる。チームの戦術として認定されているってことでしょ。それをとやかく言う人は、そういうのを知らないんでしょうね。もっと勉強した方がいい。

小島 確かにメジャーでは、今季から野手の登板も制限がついてます。延長戦か、6点差以上の場合は登板OKというルールです。

宮本 6点差って微妙ですが、あの試合は11点差。展開的にもババッと打たれて、ストライクも入らなくなったんですよね? そのまま投げさせるのもかわいそうだし、後に投げる投手も嫌でしょう。試合も決まってしまったんだし、お客さんも野手が投げて試合への興味も出てきたんじゃないかな。試合後に投げている映像を見たんだけど、テークバックとか、結構いい投げ方してましたよね(笑い)。

上原 昔、ピッチャーをやっていた野手とか、投げたら面白いですよね。ファンに喜んでもらうのがプロ野球だし、いいじゃないですか。めったに見られないモノを見られたんですから。

小島 批判している意見として多いのは「相手に失礼」といったもの。投手の働き場所でもある神聖なマウンドに、野手が上がるのに腹が立つんでしょうね。

上原 そういうのが古いんですよ。

宮本 確かに野手が投げている打席に立つバッターは嫌でしょうね。でも大山の当たりなんか、結構いい当たりだった。慣れてくれば、ヒットを打つチャンスは広がる。今後、日本でも試合展開によって野手が投げるのが当たり前になれば、気にならなくなるんじゃないですか。やっぱり野手が投げる球は、どうやっても本物の投手の球より打ちやすい。当たり前ですけど(笑い)。

小島 昔、オールスターでパ・リーグの仰木監督がオリックスのイチローを巨人の松井の打席で登板させました。セ・リーグの監督だった野村監督(故人)は「失礼だ」として投手の高津を代打に送りましたね。

上原 オールスターだし、それとこれは話が違うでしょ。

小島 球界の盟主と言われる巨人が公式戦でやったから、騒ぎが大きくなったのかもしれませんね。

宮本 それはあるかもしれないですね。でも今の原監督は、実力も実績も文句なしの監督。チームが優勝するためにって考えるなら、今回の野手の登板は戦術的にも戦略的にも理にかなっている。「何でもあり」が許される地位にいる監督なんだから、これからもどんどんいろいろなことをやってほしい。ヤクルトの高津監督なんかも合理主義者だし、後に続いていきそうな感じもします。

上原 話題っていうだけでなく、投手の負担も減る。投げた野手だって、それで話題になって人気が出るかもしれない。いいんじゃないですか。