バース以来のキングいけるで! 阪神大山悠輔内野手(25)が6回に逆転のグランドスラムを放つと、7回にはダメ押し2ラン。今季21本塁打で、リーグトップの巨人岡本に並んだ。球団では86年バース以来の本塁打王が見えてきた。2連勝の矢野阪神は、首位巨人に9・5ゲーム差とした。

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会心の当たりに大山は走りださず、打球の行方を追った。2点を追う6回無死満塁。先発柳のカットボールを完璧に捉えた。「打った瞬間はファウルになるかなと思ったんですけど、切れずに入ってくれて良かったです」。逆転の20号グランドスラムが、左翼席上段に突き刺さった。ベンチでは矢野監督らが指で「20」の数字を作った祝福に笑顔を見せた。チームでは17年中谷(20本塁打)以来、自身初の大台20発目で試合を決めた。

勢いそのままにリーグトップの巨人岡本に並んだ。2点リードの7回1死一塁。今度は藤嶋のフォークを左手1本で拾い上げた。2打席連発の21号2ランを左翼席まで運んだ。「うまく拾うことができました。追加点のほしい場面で打つことができて良かった」。リーグトップ月間8本目のアーチで、86年バース以来のホームラン王も現実味を帯びてきた。打点もトップ岡本に4打点差。2冠も射程圏内だ。

教え子の活躍に病床の恩師も喜ぶことだろう。白鴎大で指導を受けた黒宮寿幸監督(49)は5月に脳梗塞で倒れ、現在は栃木県内の病院に入院している。今は回復に向かっており、10月には退院予定。きっと、大山の活躍を目に焼き付けているはずだ。14日には白鴎大の3学年後輩にあたるオリックス大下が支配下登録された。発表された当日には祝福のメッセージも送った。リーグも違い、学年も離れている後輩に、プロの先輩としてもかっこいい姿を見せている。

矢野監督も本塁打キング争いに食い込む大山の2発に「シーズンまだまだ四十何試合残っているんやから。そりゃ1本でも多く打っていかないとアカン。チームを勝たせるための1本が30になっていけばいいし、もっともっと増えればいい」と、さらなる期待を寄せた。

チームは連勝で首位巨人とのゲーム差を9・5ゲーム差に縮めた。キングも視界に捉える大山だが、慢心はない。「今は数ではないので。大事なところでの1本を増やしていけるように頑張ります」。覚醒した背番号3が、殊勲打という名のアーチを量産し、チームをけん引していく。【奥田隼人】

阪神井上打撃コーチ(2本塁打の大山について)「今日は悠輔デーやったな。あいつには常々言っているんだけど、振る勇気と振らない勇気。何でもかんでもやみくもに振るんじゃなくてね。やっぱりこの球は張らないという勇気も必要。それが合致したときは他の選手には見られないような集中力を発揮する。今日もそのようなオーラが出ていた」