7回の矛(ほこ)と盾(たて)の対決が、雨中の熱戦の勝敗を分けた。無死一塁から楽天浅村栄斗内野手(29)が決勝の28号2ラン。ここまで17戦で失点ゼロ、防御率0・00のロッテのセットアッパー唐川侑己投手(31)のカットボールを完璧に仕留めた。楽天は今季初の4連勝で2位ロッテと3・5ゲーム差。パの上位争いが、いよいよ熱を帯びてきた。

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宝刀も「浅村様」の前では、ひれ伏してしまうのか…。同点の7回無死一塁。浅村の狙いはシンプルに「甘い球」。唐川の武器、カットボールをまず3球見逃した。「コースは意識していない。いいところに初球と(3球目の)2ストライク目と決められましたけど、あまり慌てることなく甘い球は来ると」。4球目はややタイミングが遅れファウル。カウント2-2からの6球目。外角の浮き球にバットをしならせた。日本人離れした完璧な弾道で、右中間へ決勝の28号2ラン。“ゼロ右腕”意地の6球連続カットボールを、主砲も意地でねじ伏せた。

お立ち台では先輩の涌井からもあがめられた。「明日から『浅村様』と呼ぼうかな。明日だけ」といじられ苦笑い。「また浅村が打ってくれると思います。皆さんも浅村様と呼んでみましょう」と声を張られた。

西武では09年から5年間、今季から7年ぶりに共闘する。先輩の勝ち試合では33打数13安打、打率3割9分3厘、6本塁打、18打点と覚醒する。先輩からの“圧”に「涌井さんに『打てよ』とよく言われるので、ちょっとプレッシャーも自分自身は感じてました」と返しつつ「勝たせてあげられず、責任を感じていた。今日は勝たせてあげたいと思って必死にいきました」と念が届いた。

神がかっている。前日は決勝弾を含む3発7打点。ここ5試合で打率4割2分9厘、4本塁打、10打点と手がつけらない。28本塁打、86打点で2冠。「強引にいかないように」と中堅より右への18本が量産の証しだ。「残り試合(カード)勝ち越しでOKじゃないのが現状。何が何でも明日は勝って、3連戦を終わりたい」。勝利の神様は「浅村様」にほほえんだ。【桑原幹久】

▼楽天浅村がプロ入り初の月間10本塁打。楽天で月間10本以上は19年5月のブラッシュ(10本)以来。球団の日本人選手では07年5月の山崎武(12本)以来2人目となった。浅村は今季、楽天生命パークでの46試合で20本塁打を量産(ビジターは36試合8本)。同球場でシーズン20本は、09年山崎武(23本)以来、11年ぶり2人目。