コロナ禍、情報伝達疑惑…。矢野阪神が激動の日々を経て5日ぶりに白星を手にした。「7番捕手」で先発した原口文仁捕手(28)が3カ月ぶりの1発となる同点2号ソロを放つなど2安打3打点の活躍で猛攻の中心となった。連敗を「3」でストップ。逆境に強い男が、苦境のチームを救った。

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負の連鎖を断ち切ったのは、原口の一振りだった。逆転された直後の2回。ヤクルト吉田喜の初球、高めに浮いたカットボールを逃さなかった。「なんとか早く追いつきたい、塁に出ていい攻撃をしたいと思っていました」。執念のこもった打球は、左翼スタンドへ一直線に伸びていった。

開幕2戦目の6月20日巨人戦以来、3カ月ぶりの同点の2号ソロ。チームは新型コロナウイルスの集団感染、さらに前日26日には、試合中に外部とのやりとりがあったのではないかと指摘される一幕もあった。騒動続きの矢野阪神に原口が勢いを与えた。「甲子園に帰る前に1つ勝って戻れる。そういった部分ではよかった」。

この日先発の秋山とは、09年ドラフトの同期。1点リードの7回1死満塁では「神宮で1点差は投手陣にはきつい。バットに当てていけば何か起こる」と、ヤクルト長谷川の投じた5球全てにバットを振った。最後は左翼線を破る2点適時打を放ち、一挙5得点のビッグイニングを演出。「勝ちがついてよかった」と同学年右腕の6勝目を心から喜んだ。現役時代は捕手だった矢野監督も「バッテリーは共同作業。その中でフミらしい勝負強さは出してくれた。バッテリーが一番の勝因やったかなと思います」と最敬礼だ。

発奮材料もあった。今月中旬には第2子が生まれたことを発表。体重3134グラムの元気な女の子が生まれた。「本当にモチベーションにもなりますし、いいところを見せられるようにこれからも頑張りたいと思います」。ヒーローインタビューでは照れ笑い。現在、正捕手の梅野は右腹斜筋の筋挫傷で2軍リハビリ中。チームの非常事態で、かっこいいパパの姿を届けた。

2安打3打点1本塁打でチームの連敗を3で止めた。5日ぶりの白星で一息ついたが、29日からは過酷な13連戦が始まる。「まだまだチームとして諦めてない。一戦一戦、今は一丸となって相手チームに向かっていきたいと思います」。原口が「必死のパッチ」で窮地の虎を救う。【只松憲】