中日福谷浩司投手(30)が16日、三重・津市の「みどりクリニック」での自主トレを公開した。今季の目標は異例の“完投負け”に設定。昨季1完投負けを含むリーグ最多10完投をマークしたエース大野雄に触発され、右のエースに立候補だ。

「完投負けができることは、すごい投手だと思う。こういう人がエースなんだなと思う。表現は悪いですけど、あこがれます」。昨季、20試合11勝6敗、防御率1・82で、沢村賞を始め投手3冠に輝いた先輩左腕への憧れを隠さなかった。

福谷は先発転向2年目の昨季、14試合8勝2敗、防御率2・64とブレーク。だが自身まだ完投は0で、18年までリリーフ専任だっただけに「完投」の価値を知る。「大野さんが先発の時は、負けても完投していた。ほぼ最後まで投げてくれるっていう雰囲気は、中継ぎとしても大きかった」。もちろん目指すは、負けではなく、勝利でのプロ初完投だ。

完投ボディー作りに余念がない。17年オフから、医療と運動の両面から競技力向上をサポートする施設、みどりクリニックに通い続ける。今オフのテーマは、筋力増とスタミナアップだ。標高2200メートル相当に設定された低酸素質でのトレーニングを導入。血中乳酸値が、運動後15分から運動直後に下降するなど、早期の回復力を手に入れた。同クリニックの瀬戸口芳正理事長(55)は「スタミナ回復力の成長では、レスリングの土性さんと似た感じ」と説明。16年のリオ五輪女子レスリング69キロ級で金メダリストを獲得した土性沙羅(どしょう・さら)に匹敵する回復力だという。

「1年を通じて先発するために、長いイニングを投げて、次の試合までにきちんと回復する意味でスタミナを重視しています。(土性さんクラスは)うれしいです」。大野雄と双璧のエースになって、10年ぶりVを引っ張る。【伊東大介】