巨人野上亮磨投手(33)が、今日9日からのオープン戦ソフトバンク戦(ペイペイドーム)で581日ぶりの“1軍登板”に臨む。

開幕ローテ争いに食い込めるか。中継ぎでも何でもやる。昨オフの1億2000万円減の年俸3000万円で契約を更改。背水のシーズンに挑むFA右腕は「自分の置かれている立場は分かっています。やるしかない。最後の最後までそのつもりでやっている」。2月の宮崎2軍キャンプで若手に交じりながら汗を流してきた。

17年オフ。西武から複数球団争奪戦の末、巨人にFA移籍した。背番号は「23」。入団会見では「日産ですかね」とプロ入り前の古巣、社会人の日産自動車をちらつかせた。嫌みなく笑いをとる。無口のような印象を与えつつ、話せばおちゃめで愉快だ。一方で九州男児を絵に描いたような寡黙さを兼ね備える。まさに、ギャップを凝縮したような男だ。巨人移籍1年目の18年春季キャンプで周囲の度肝を抜いた。キャンプ中盤の2月12日に一心不乱に400球を投げ込んだ。実戦登板後にそのままブルペンに直行。10年以上のキャリアを持つ用松ブルペン捕手も「いつまで投げるんだろうと…」と目を丸くした。

19年の日本シリーズ前だった。宮崎フェニックスリーグで調整登板した10月20日。左アキレス腱(けん)を断裂する大けがを負った。長いリハビリ生活を余儀なくされた。ギプスで固定されたまま車を運転し、ジャイアンツ球場に通った。「やれることをやるしかない。やれることしかできない。いろんな思いはある。それは復帰してからにとっておきます」。心中とは裏腹に明るく装い、笑った。

昨季6月に2軍戦で実戦復帰を果たした。18試合に登板し、0勝3敗、防御率4・98。完全復活とは言えない。1軍マウンドにはとどかなかった。阿部2軍監督は「野上はスマートに見えるけど、投げて、走って、つくってきたタイプ。去年はケガから復帰したばっかだから走れなかったんだろうな」。今季2月の宮崎キャンプで居残りで、黙々と走り込む右腕を遠目で見ながら言った。若手は片付けを終え、三々五々、宿舎へと引き揚げていた。「こういう姿から若手は勉強しなければいけない」とも付け加えた。

ゼロから積み上げ直した下地で開幕1軍入りへの勝負に出る。先発ローテは開幕投手に内定している菅野に続く戸郷までは確定。サンチェス、井納も順当にいけばローテ入りする見込み。残り2枠を今村、高橋、畠、平内らと争う情勢になる。中継ぎとしては、ロングリリーフの経験も武器になる。ピンチでの粘り、勝負どころでの度胸が投球スタイル。野上が文字通り「背水のマウンド」へ挑む。(金額は推定)【為田聡史】