日刊スポーツ東北版で、毎週木曜に楽天情報をお届けする「週刊イーグルス」。第10回は2日連続掲載の特別編。大村三郎ファームディレクター(FD、44)がファームの現状を、投打に分けて語る。今回は投手編。7月の注目投手に、6月30日2軍ヤクルト戦で1回無失点とした藤平尚真投手(22)を挙げた。【取材・構成=桑原幹久】
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-育成2年目の小峯新陸(しんり=19)が6月15日DeNA戦で5回1失点で公式戦初白星
身長(189センチ)があって、ストレートは力がある。今年は150(キロ)が出るようにもなっている。
-特徴は
カーブの変化量が60センチ以上ある投手はなかなかいない。コントロールができるようになったらカウント球でも使えるし、勝負球でも使える。本当にいいピッチャーになると思う。
-初めて投球を見た時の印象は
去年は球速が出ても144、5くらい。ただ、腕が遅れて出てきて、強い球を投げる。バッターは前に出されて、球が強いから詰まる。打者からしたら嫌な投手。今年に入ってすごく成長して、スピードも上がった。まだまだコントロールは良くないが、ゲームを作ることはできる。
-似ているタイプの投手は
1年目に見た時はテークバックを引いて投げる動作は岩隈とかぶった。
-12年ドラフト1位の森雄大(26)が6月27日ロッテ戦で復帰登板。1/3回を2四死球1三振無失点
とりあえず復帰できた、試合に投げられたというところが進歩。本人とは「今日は投げたのか?」「今日は投げないのか?」といつも話をする。去年、僕はまだ森が試合でもブルペンでも投げたところを見たことがなかった。今年に入ってブルペンは見るようになったけど「まだお前が投げる姿を見てないから早く投げてくれ」と、そんな話はしていたね(笑い)。投げ方は人より独特で、真っスラして打ちづらい投手。石井GM兼監督も期待しているからこそ残したと思う。期待に応えてほしい。
-若手先発陣の突き上げが出てきた
1軍があのメンバーだから、そのバックアップもファームにたくさんいる。その中で若手がどれだけ食い込めるか。いい競争にはなっていたかなと。高田孝一(23)がああいった結果(6月26日ソフトバンク戦で先発も16球で降板)にはなったが、やっと上でも投げさせてみたいな、という選手が出てきつつある。
-好循環が今後に生きる
それがないと常勝チームは作れない。来年、再来年、今の1軍の先発投手陣がそのままいけるのかといえばクエスチョンマークはつく。突き上げがないとチームは強くならない。
◆大村FDが選ぶ7月の注目投手 藤平尚真
約1カ月、永井怜育成コーチとマンツーマンでミニキャンプのようなことをやっていた。走ったり、投げたり、動きのチェックをしてみたり。永井育成コーチはまだまだ厳しい言葉が多いけれど、これをどう彼が生かすか、変化するか、すごく楽しみにしている。
課題はコントロール。自分で崩れていくパターンが多いから、そこさえ安定すれば。投げるボールは本当にいい。僕は去年から藤平が一番出てきてほしい投手だと思っていて、今でも思っている。僕の中では、それに小峯が並びつつある。
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「野球の神様に愛される選手を育てる」。秋保神社に奉納したのぼりに、こう記した。どれだけ努力をしても、チャンスがなければ披露できないし、結果を出さないといけない。ファームでも1軍の選手と対戦しているイメージを持ってやれば、1軍でも戸惑うこともない。
打者目線で言えば、1軍の投手は「第1ストライクが甘くなり、追い込まれるごとに厳しく散らばっていく」。2軍の投手は球速は変わらなくとも「第1ストライクは厳しいが、追い込むにつれて甘くなる」。野球は失敗のスポーツ。一流打者でも7回は失敗する。甘い球を一発で仕留められることに越したことはないが、空振りでなく、ファウルであればいい。粘って、甘い球を仕留める能力を高めれば、1軍でも結果を出せる。そういった努力をしていれば、野球の神様は絶対に愛してくれると思う。