東京オリンピック(五輪)で1軍のペナントレースは中断中ながら、2軍公式戦は各地で行われている。ロッテ森遼大朗投手(22)はイースタン・リーグで今季ここまでトップの8勝をマーク(7月30日現在)。育成選手として4年目を迎えた今季、支配下登録へとアピールを続けている。7月20日の日本ハム戦(鎌ケ谷)では1安打完封勝利も挙げた右腕に、オンラインインタビューで思いを尋ねた。【金子真仁】

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3番中田翔、4番清宮幸太郎、5番大田泰示。2軍調整中とはいえ、日本ハムのスタメンには強烈な名前が並んでいた。まだ1軍に上がる権利のない森遼大朗も、たかぶった。

「クリーンアップにすごい打者が3人いて、3人とも1軍でバリバリやってる打者で。自分の力を試せるいい場面だなと思って試合には入りました」

初回2死、いきなり中田と対する。警戒し2ボールから入ったが、スライダーと直球で2-2に戻した。最後はフォーク。空振り三振を奪った。

中田からは4回にも3つの球種を駆使し、空振り三振を奪った。清宮も空振り三振。1打席の中で2度、直球を空振りさせた。冒頭の中軸3人を9打席0安打4奪三振と封じ込めた。

「いい直球がいってました。スライダーもいいコースに決まって、フォークの抜け感も良かった。高さだけは間違えないように。多少の(横の)ずれは仕方ないと思って投げましたが、バランスも良かったので、結果もついてきて良かったです」

初の完封勝利を素直に喜んだ。最速は145キロ前後でも、9回にもその球速が出た。17年育成ドラフト2位で都城商(宮崎)から入団。その夏に左ひざを故障し大学進学の選択肢もある中で、完治しないままプロ野球の育成契約の道を選んだ。試合で初めて投げたのは2年目。驚いた。

「復帰した時は1イニングだけだったんですけど、1イニングだけでも相当神経を使うし、けっこう大変で。高校だったらある程度のところに投げておけば打ち損じてくれたり、凡打だったりもあるんですけど、プロは全然そこが違うので。今回、無失点で9イニングを投げ切れたのはすごく大きいなと思います」

3年間の育成契約を終え、再契約を交わしての4年目になった。勝負の年。しかし石垣島でのキャンプイン後に右太ももを肉離れ。2月中旬からの沖縄本島遠征への帯同も内定していた。「チャンスを1個つぶしてしまった」とさすがに落ち込んだ。でも、けがの光明という言葉もある。

「でも後々思ったのは、ケガする前と後の投球フォームの意識が全然違ってきたので、今はあのケガがあって良かったかなと思います。意識的な部分ですけど、ちゃんと体の軸を縦に使える感覚が出てきたという感じです」

キャンプから戻ると、小野2軍投手コーチとも相談し、タイプが似ている美馬に師事した。持ち球の1つに過ぎなかったフォークボールが進化。「教わって、だいぶ、いや、全然違いますね。本当にうまくはまった感じです」。勝負できる力がどんどん備わった。

オリックス山本、巨人戸郷ら地元都城にゆかりのある選手たちが1軍で活躍している。1学年上の山本とは公式戦で投げ合い、コールド負けしたほろ苦い思い出もある。「自分も早く、そっち側にいけたらなというのはあります」と思いはなおさらに募る。

育成契約を選ばなければ今ごろ大学4年生だ。

「大学に行ってたら、野球続けてたかも正直分からないですし、プロに入ってしっかり4年間野球をできる環境にいられたというのは非常にありがたいです。今年も再契約してもらって、すごく恵まれているし、良くしてもらっているので、頑張って、何とか球団に恩返しできればいいなと思っています」

エキシビションマッチでも登板のチャンスはありそうだ。2軍浦和球場での3年半の学びが、試される。