日本ハムは11日、中田翔内野手(32)が同僚選手1人に暴力行為を行ったとして、無期限で1、2軍全試合の出場停止処分を科した。札幌市内の球団事務所で川村浩二球団社長兼オーナー代行が事実関係などを説明。4日、北海道函館市で行われたエキシビションマッチの試合前に暴力行為があり、試合中に球場から退場させられていた。統一契約書に違反する重大案件として、球団判断で厳重処分を下した。6月上旬に急性腰痛で離脱した中田は、リハビリのステップを順調に歩んでいたが、現在は自宅謹慎中。ユニホーム着用も禁じられるなど、復帰までの道は厳しいものになった。

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激震が走った。暴力行為に及んだ日本ハム中田は、統一選手契約書第17条(模範行為)違反により、野球協約第60条(1)に該当すると認定され、球団判断で1、2軍全試合の出場停止処分を科された。処分期間は未定。取材に応じた川村球団社長は「球団の長年の主力選手でありますし、球団の顔。彼の行為は、信頼を大きく傷つけるものと思っています」と重く受け止めた。

「事件」は4日に起きた。エキシビションマッチDeNA戦(函館市千代台公園野球場)での試合前、ウオーミングアップ終了後だった。中田と、被害を受けた選手がベンチ裏で話していたところ、中田が突発的に腹を立てて、手を出したという。偶然居合わせた選手が止めて、その場は収まったが、被害に遭った選手から申し出があり、判明した。川村球団社長は「練習中に何かあったわけではない。被害を受けた選手には、なんら落ち度はない」と説明した。

暴力行為の事実を確認した球団は、「4番一塁」で先発出場して1回にタイムリーを放った中田を2回表で途中交代させ、球場からも退場させ、自宅謹慎を命じた。中田や暴行を受けた選手、他の選手やスタッフら関係者への調査を実施。被害を受けた選手から、大ごとにしたくないという申し出や、中田が深く反省していることを踏まえた上でも、厳しい処分が必要と判断。事実を公表した。また、被害に遭った選手のプライバシーを守るため、他の選手や首脳陣、スタッフへの取材等を厳に控えるようアナウンスした。被害選手はプレーへの支障はなかったため、病院には行かなかったという。

中田は暴力を働いた選手に謝罪し、「全面的に自分が悪い。チーム、関係者、家族に大変なことをした」との発言を繰り返している。被害選手とは「普段は懇意の2人だった」(川村球団社長)といい、当事者同士では和解も済んでいる。ただ中田は現在も自宅謹慎中で、球団施設で個人での自主練習は認める方針だが、同社長は「チーム練習には参加させず、ユニホームを着させることはありません」と再発防止に厳しい態度で臨む考えを示した。

中田は今季、腰痛に悩み、39試合出場で打率1割9分3厘、4本塁打、13打点の打撃不振に陥っていた。6月には出場選手登録を抹消されたが、7月27日のエキシビションマッチ広島戦から1軍に合流。後半戦に向けて、調子を取り戻しつつあった。今季は3年契約の最終年。言語道断ともいえるチームメートへの暴力行為だけに、信頼回復は簡単ではない。【田中彩友美】

★統一選手契約書 第17条(模範行為)

選手は野球選手として勤勉誠実に稼働し、最善の健康を保持し、また日本プロフェッショナル野球協約、これに附随する諸規程ならびに球団の諸規則を遵守し、かつ個人行動とフェアプレイとスポーツマンシップとにおいて日本国民の模範たるべく努力することを誓約する。

★野球協約 第60条(1)

◆出場停止選手と出場停止選手名簿(サスペンデッド・リスト)

球団、あるいはコミッショナー、又はその両者は、その球団の支配下選手に対し、不品行、野球規則及びセントラル野球連盟、パシフィック野球連盟それぞれのアグリーメント違反を理由として、適当な金額の罰金、又は適当な期間の出場停止、若しくはその双方を科すことができる。球団、あるいはコミッショナー、又はその両者によって出場停止処分を科された選手は、コミッショナーにより出場停止選手として公示され、出場停止選手名簿に記載される。出場停止選手は、出場停止期間の終了とともに復帰するものとする。(後略)