コイの千賀になる! 広島から育成ドラフト1位で指名された田辺・新家颯(しんや・そう)投手(18)が25日、和歌山・田辺市内の同校で指名あいさつを受けた。直球の最速は141キロで、打者の手元で鋭く曲がる縦スライダーが武器の左腕。育成選手出身で球界を代表する右腕のソフトバンク千賀を目標に掲げ、プロとしての階段を駆け上がっていく。

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詰め襟の学ランを着た新家が、テレビのインタビューでマイクを両手で握りしめた。「ずっとドキドキしています。いまだに信じられないです」。太平洋に面した和歌山・田辺市で生まれ育った左腕が、広島から育成ドラフト1位で指名を受けた。まだあどけなさの残る表情ながら、力強く将来の野望を明かした。

「千賀投手は三振を多く取っている。自分もそういう風な投手になりたい」

身長182センチから投げ下ろす最速141キロの直球を軸に、縦スライダーを武器とする。今夏の和歌山大会では初戦で敗退したものの、和歌山工戦では9回3失点と完投。12三振を奪った投球が、DeNAに1位指名された市和歌山・小園健太投手の視察に訪れていた鞘師スカウトの目に留まった。同スカウトは「腕の振りが柔らかくて、変化球がキレる。サイズもあるし、鍛えたら面白いと思った」と指名の経緯を語った。

独特の曲がり方をするという縦スライダーを新家は「ストライクも取れて、空振りも取れる」と胸を張る。球速は120キロ前後で「最初はカーブの握りだと思っていたんですけど、自己流で投げやすい握りを見つけました」と中学時代から得意球としてきた。打者の手元で急に曲がるだけに、チームメートからは「気持ち悪い」と言われたほど。鞘師スカウトも「万人が投げられる感じではない特徴ある変化球」と表現した。

ソフトバンクファンの新家は、同じ左腕の大竹のフォームを取り入れ、飛躍につなげた。1年冬に左肘の手術を経験。リハビリに通っていた病院の先生から「大竹投手の足の使い方を参考にしてみて」と助言され、軸足の左膝をギリギリまで内側に入れない投法を習得。下半身の粘りが生まれたことで「コントロールも良くなって、勢いのある球が投げられるようになった」と手応えをつかんだ。

「三振を多く取るスタイル。ピンチでも自分のスタイルを貫いて多く三振を取っていきたい」

宝刀「縦スラ」を引っさげた育成のホープが、左腕王国形成を進めるカープに仲間入りする。【古財稜明】

◆新家颯(しんや・そう)2003年8月14日生まれ、和歌山県田辺市出身。会津小1年時にあいづクラブで野球を始め、衣笠中の軟式野球部を経て、田辺に入学。3年時はエースで4番。甲子園出場経験はなし。遠投は約90メートルで、50メートルは6秒7。182センチ、重80キロ。左投げ左打ち。

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