前回日本一となった舞台で、再び夢をもたらす。「SMBC日本シリーズ2021」は27日に舞台をほっともっと神戸に移して第6戦が行われる。オリックスは中嶋監督が予告している山本由伸投手(23)が先発。第1戦から中6日で、その間に沢村賞を受賞したリーグ4冠のエースは「負けは許されない」と必勝を宣言した。日本一へ王手をかけているヤクルトは、同球場で若手野手が練習。高津臣吾監督(53)は難敵山本攻略へ、策を巡らせた。

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負けられない一戦に、絶対的エースが君臨する。中6日で第6戦に先発する山本は「とにかく負けは許されないので、しっかり勝って、なんとかタイに持っていきたいです」と闘志を燃やした。2勝3敗で1敗もできない状況に変わりないが、白星をつかめば第7戦への扉が開く。「もう、ここまで来たら日本一を取るしかない。しっかり、最後に全てを出し切れるように頑張ります」と臨戦態勢を整えた。

今シリーズは5試合全てが2点差以内で決着しており、実力は拮抗(きっこう)状態。山本は「毎試合、接戦になって厳しい戦いになっていますけど、粘り強く戦えている」とチームに手応えを感じている。

前回登板の第1戦は6回1失点と数字上はまとめたが、本調子を欠いた。吉田正のサヨナラ打で勝ち星を拾うも「思ったところに投げられないボールも多かったので、自分のフォームで投げられるように修正しました。個人的にも、良い形で終われるように良い投球がしたい」とこの1週間で改善点をあぶり出した。

シーズンでの最多勝、最優秀防御率、最多奪三振、勝率第1位の4冠に続き、22日にはシーズンで最も優れた先発完投型の投手に贈られる「沢村賞」に輝いた。選考基準全7項目のうち5項目をクリアし、満場一致での選出に「この賞は選んでいただく賞。誰かに評価されるのはすごくうれしいこと」と語っていた。レギュラーシーズンで圧倒的なパフォーマンスで18勝したように、全国の野球ファンをうならせる投球で21年ラストマウンドを締めるつもりだ。

崖っぷちから仲間がバトンをつないでくれ、「神戸に帰ろう」の合言葉通りになった。舞台は25年前、日本一になったかつての本拠地。エース右腕の剛球が、首を長くして待っていた神戸の街に光をともす。【真柴健】