待ってろ、ヤクルト! 交流戦を12勝6敗で終えた4位阪神が、リーグ戦再開から逆襲をさらに加速させる。1日オフを挟んだ14日、甲子園で全体練習を開始。チーム最年長の糸井嘉男外野手(40)が「去年と真逆のことを起こす」とミラクル逆転Vへ大号令をかけた。昨季逆転優勝を許したヤクルトが投手陣に休養を与えたように、疲労軽減に重点を置いたマネジメントで世紀の大まくりを狙う。

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甲子園室内練習場に響く雨音をかき消すように、糸井が言った。「みんな雰囲気もいいですし、去年と真逆のことを起こしたい」。昨季は交流戦終了時点で2位と7ゲーム差の首位も、最終的にヤクルトに大マクリを食らった。今季は12・5ゲーム差で首位ヤクルトを追う立場。交流戦3連勝締めの勢いそのまま、チーム最年長40歳が大号令をかけた。

今季は開幕9連敗と泥沼発進だったが、交流戦12勝6敗で借金は6に減った。3位広島には2ゲーム差の4位。いつのまにかAクラスも見えている。「(上昇ムードを)もちろん感じる。ここで終わりだとは誰も思っていない。ここからさらに行くよ、と嘉男がみんなの声を代弁してくれた」“真逆”の大逆転へ、糸井の言葉に呼応するように矢野監督も力を込めた。

交流戦チーム防御率1・96は12球団1位。盤石な投手陣のコンディション維持が、逆襲の鍵を握る。リーグ戦再開となる17日DeNA戦(甲子園)で、湯浅がリフレッシュ休養から復帰予定。入れ替わる形で前日13日には同様に岩崎が抹消された。「そういうような(ことが)できるレベルに、みんな来てくれているっていうのはもちろんあってのこと」と指揮官。守護神に戦略的休養を与えられるほど量、質ともに投手陣のレベルが高い。

昨季はヤクルトが、奥川を原則的に中10日で登板させるなど、巧みなマネジメントで疲労軽減に努めた。ライバルは秋になってもフルパワーだった一方、阪神はつまずいてV逸。「これから暑くなって先発も疲れてくるとか、いろんなことが起こりうる」と矢野監督は想定する。藤浪、秋山、桐敷、才木ら出番を待つ先発も豊富。プロ4年目で初めて先発ローテを回っている西純らに休養を与えることも可能だ。

「あとはどう点を取っていくか。交流戦の課題でバントの成功率が悪かったというのもある。そういうところも良くしていけると思う。それをやっていければ、強みの投手陣で最少失点でやりながら勝つことはできる」と言う。「ヤクルト方式」の投手管理でライバルのお株を奪い、ミラクル逆転Vを実現させる。【中野椋】

◆阪神21年V逸VTR 交流戦終了時点では2位に7ゲーム差の独走態勢だったが、球宴前には巨人に2ゲーム差まで迫られた。後半戦に入り8月29日に、4月4日から守ってきた首位の座から陥落。シーズン最終戦となった10月26日に広島に敗れ、ヤクルトに大逆転Vを許した。ヤクルトは9月末までは先発投手陣に中6日以上の間隔を空け、野手にも休養を与えながら起用を続けた。阪神は佐藤輝、サンズ、梅野ら前半戦をけん引したメンバーが不調に陥り、最後まで立て直すことができなかった。

▼プロ野球史上最大の逆転優勝は14・5差で、63年の西鉄が南海をうっちゃった。セ・リーグでは、08年巨人が13差を覆して阪神を追い抜いたのが最大の逆転Vだ。今季阪神が首位につけられた最大ゲーム差は、4月23日ヤクルトとの13・5差。ここから優勝を果たせば、NPB2位でセ・リーグ最大の逆転Vとなる。また阪神の球団史上最大差逆転優勝は、64年の6・5差。今季は4月2日に首位巨人から7差をつけられており、開幕8戦目にしてこのデッドラインを越えていた。

○…佐藤輝にリーグ戦再開後の課題が設けられた。交流戦ではロッテ佐々木朗に3打数無安打2三振に抑えられ、藤井康巡回打撃コーチは「160キロをどう打ち返してくれるかと思っていた。そういうところではもうちょっとやな」と話した。テーマは直球を一発で仕留めること。「シーズン中も速いボールをファウルにしている。これがしっかり捕まえられるようになったら最強になってくる」と期待を込めた。

○…井上ヘッドコーチが“勝率5割気にしない作戦”を説いた。交流戦前に「開幕から『阪神おいおいおい』と言われたのを『やっぱり阪神来たな』と。『逆おいおいおい』作戦でいければ」と意気込みを示し、この期間12勝6敗で借金を6まで減らした。ただ借金数について「交流戦の途中から言わなくなったら減ってきた。数字は意識しすぎるとダメと思えば、俺はあまり言わないでおこうと」とし、あえてスルーして完済を目指す。

○…島田はノーヒッター今永打ちで1番完全奪取を狙う。交流戦でリードオフマンに定着しつつあるが、今季は左投手相手に打率6分7厘。左腕宮城と対決した12日オリックス戦はスタメン落ちし「右投手だけを打っているようではまだまだ」。リーグ戦再開となる17日DeNA戦は左腕今永と対戦予定。「そういう投手ほど、やってやろうと思える。自分で殻を破っていかないといけない」と意気込んだ。

○…井上広大外野手がソフトバンク3軍との練習試合(鳴尾浜)で逆転2ランを放った。打席での歩幅の間隔を試すことをテーマに掲げた。1点を追う5回1死一塁でソフトバンク・アルメンタの145キロ直球を捉えて右翼に運んだ。「構える時に歩幅を広く取って打席に立ちました。試してやった結果がきょう出たので良かったです」。練習試合は降雨のため6回で終了となった。

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