オリックスが史上初となるリーグ最終日の逆転Vで、2年連続14度目の優勝を決めた。仰木監督やイチローらを擁した95、96年以来のリーグ連覇。勝利が絶対条件だった楽天戦に逆転勝ちし、優勝マジック1だった首位ソフトバンクがロッテに逆転負けしたため、同率ながら対戦成績が上のオリックスに凱歌(がいか)が上がった。前回連覇時のV戦士でもある中嶋聡監督(53)が、変幻自在だった仰木采配をほうふつとさせる“ナカジマジック”連発で、劇的ドラマに導いた。次の目標はもちろん、昨季果たせなかった日本一だ。

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大興奮の1分30秒が待ち切れなかった。オリックスのゲームセットは午後9時25分。ソフトバンクの戦いが映し出された大型ビジョンで、ライバルの負けを確認すると、なだれるように、ナインが飛び出した。

中嶋監督はマジックの使い手ながら、異例の2年連続優勝マジック点灯なしで連覇を達成した。この日勝ってもソフトバンクが引き分け以上でV逸だった崖っぷち。自軍は逆転勝ちし、ライバルが逆転負けという想像を絶する大逆転Vに、感激はひとしおだ。「143試合、最後の試合で決まる…。信じられない気持ち。ここまで連れてきてくれた選手たちにありがとうと言いたい」。両手を広げ、仙台の夜空に5度舞った。

「勝ち負けの責任は全部、俺が取る。みんなに背負うものはない。思い切っていけ!」

就任後初めて円陣でゲキを飛ばしたのは9月17日のソフトバンク戦。首位を3差で追う3連戦初戦、選手を鼓舞した。結果は3連勝。優勝争いに生き残った。

ナインの前で気持ちを全面に出したのは、1月31日のキャンプイン前日の全体ミーティング。「日本でまだ2番目だから。俺たちは本当のところを目指す年になる」と訴えかけた。

この日も円陣で声を張った。「勝って終わりたいな? 優勝のことを考えるなよ。この試合を勝って、喜ぼう。笑おう。全員で行くぞ! 全員で勝つぞ!」。ベンチ全員が燃えた。

計算し尽くされた「ホワイト運用」も効いた。先発投手は相手との相性や登板間隔を考慮。救援陣は3連投を避けた。コロナ禍で選手が離脱すれば昇格させた選手を即起用。昨季25年ぶりVを成就したチームを“強者の血”に入れ替えた。

8月末、新型コロナに感染。コーチ陣との電話はスピーカーを使って、全員で共有。6試合、現場から離れ、画面越しにチームの奮闘を見ると、拳を強く握り「ファンの気持ち」を深く知った。球団合併後初の2年連続CS進出が決まっても「そこを見てるわけじゃない」と貪欲だった。目指すのは連覇だけだった。

「不安しかないよ-」。

2軍戦も徹底チェックし、野球漬けの日々。20歳の紅林を追いかけ回し「友だちじゃないんだから」と照れたこともあった。早出練習では「もっと打て、バカタレ!」と愛情を注ぐ。就任後初めて3連投させた山崎颯には「肩、上がるか?」と心配。「打順は生き物」と143試合で141通りの打順を組み、得点を奪う作戦を練った。変幻自在だった仰木監督をほうつふつさせる“ナカジマジック”連発。現役だった95、96年以来の連覇を決めた。

もちろん次の目標は、昨季果たせなかった日本一だ。「まずは日本シリーズに行きたいと思います。もっと、応援してください!」。本気のまなざしに、選手も、ファンも信頼してついていく。かつて扇の要を務めた「阪急最後の戦士」はもう、次の戦いを見据ている。【真柴健】

○…この日の山本はベンチ入りせず、ロッカー裏で試合の様子をチェックした。同時に優勝可能性のあったソフトバンクのロッテ戦(ZOZOマリン)の展開も追い、「精神的に一番しんどい日になりました。どちらも見ていたので、すごく忙しかった」と笑った。

○…2年連続優勝マジックが最後まで点灯せず、消化試合も同じくゼロで連覇を決めた。昨年はシーズン最終戦の10月25日楽天戦で、エース山本が圧巻の完封勝利。首位を奪い返して貯金15でシーズンを終え、同27日の2位ロッテの敗戦で優勝が決まった。今年も最終戦で決着。優勝を争ったソフトバンクもこの日が最終戦で、別カードでの決着は54年ぶりという“超熱パ”を演出した。

▽宮城(2年連続2ケタ勝利で貢献し)「本当に幸せ。(終盤)大事なところでやらかしているので、次(CS)はリベンジできるように一生懸命頑張りたい」

▽NPB斉藤惇コミッショナー 史上稀に見る大混戦となったペナントレースでしたが、バファローズはシーズン終盤、連日の激戦を制し、大逆転での連覇を達成しました。中嶋聡監督のもとコーチや選手をはじめスタッフを含めたオリックス球団全員の力を結集させて勝ち取った素晴らしい連覇でした。

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