ロッテ高部瑛斗外野手(24)は一瞬たりとも間を置かずに「はい、やります」と明言した。

1安打につき1万円を、白血病患者の支援基金に寄付する-。入団前から意思を公言していた。昨季までは通算9安打。プロ3年目の今季、一気にシーズン148安打。17日、大幅アップで契約更改し「野球を続ける1つの理由として、それはあるので。闘っている子どもたちに少しでも何かしたいという気持ちは、変わらず持っています」と、胸を張って話した。やがてコロナ禍が落ち着けば、交流の機会を作っていきたいとも願っている。

大学生の時、3歳下の弟の晴斗さんが16歳で他界した。白血病に倒れた。闘病も目の当たりにした。今季も全日程終了の翌日、関東地方にある墓に足を運んだ。「1年間終わったので。その区切りというか」。弟の分まで。いつでも力をくれる大切な存在だ。

この初夏、出会いがあった。球団のTEAMMATES事業の一環で、宇都宮幹汰君(10)が入団した。急性リンパ性白血病で長期療養中。「選手のみんなと仲良くなって、自分が頑張って応援することで、皆さんにやる気や元気を与えられるTEAMMATESになりたいです」と夢を口にしていた。

何度か球場を訪れ、交流した。亡き弟の存在が重なるような少年。手紙はロッカーに貼られた。「本当に、病気になったことを感じさせないくらい明るい人間で。やっぱりあれだけ今のことを全力で生きている姿を見て、勇気をもらいましたし、僕ら大人に対しても屈することなく、明るく接してきてくれるので。すごいなと、尊敬の部分も含めて、彼にいろいろなものをもらったなと思います」。心底からの言葉を次々と連ねていく。

基金への寄付に積極的な、思い豊かな好青年。幹汰少年にはどんな言葉を伝えたのだろうか。問いかけると「うーん…言葉として…あるんすかね?」。そう返し、続けた。

「幹汰君にいろいろ話しかけてもらって、僕が逆に。それで僕もいろいろそれに答える形だったので。彼にどう届いたかは分からないですけど、何かしらの一言とかが彼の中で大きいものになってくれたらいいなと思って、話せることは全部話しました」

幹汰少年とともに戦うシーズンは終わった。高部も盗塁王やゴールデングラブ賞では止まらない。「まだまだこれからだとは思っているので。満足することもなく、まず野球にしっかり集中したいです」と、来季への準備を始めている。安打を積み重ねる。誰かの役に立つ。【金子真仁】

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