小久保ホークスが頂点に立った。ソフトバンク2軍が3年ぶり14度目のウエスタン・リーグ制覇。就任2年目の小久保裕紀2軍監督(51)は本拠地で3度、宙を舞った。「ずっと応援してくれた筑後のファンの前で胴上げしてもらえた。結果的には良かったかなと思います」。12年の自身の引退試合以来、指導者としては初の胴上げを味わった。
「優勝」にこだわった。シーズン残り試合「15」。小久保監督は選手らに訓示した。「ここまできたら、優勝を意識して」-。若手選手にとっては実戦を積む場であり、1軍昇格を目指してアピールする場という意味合いが強い。指揮官も「スタートで優勝を目指してはない。勝つことが目的ではない組織」ときっぱり。ただ、シーズンが進んでいくにつれて優勝が目前に迫ってきた。小久保監督は自問自答した末に、勝利を優先させることを決めた。
「目の前に優勝がある状況になった時、優勝を意識させた方が(選手に)いいと思った。ペナントレースで歴史に名が残っていく中での負けられない試合で、どういう仕事ができるのか。あえてプレッシャーもかけた」。緊張に負けず、持てる力を発揮できるのか。若手がチームの主力へと成り上がるために必ず通る道のりだった。
「選手が伸びるために」。指揮官の思考はそれしかなかったという。そのためであれば、容赦ない厳しくも愛のあるダメ出しもあった。1日の広島戦のことだ。5点を追う最終回に3点を返し、なお無死二塁の場面で4番リチャードが遊ゴロ、2死二塁となったところで6番野村大は空振り三振。試合後、小久保監督の表情は険しかった。「最後に打つのが1軍選手。どうでもいいところでは、別に打てるんですよ」。
両選手は今季、1軍と2軍を何度も行き来した。1軍に定着できない要因が垣間見えた瞬間でもあった。「『さすが1軍に食い込むだけの選手やね』と言わせる場面で打たないと。そこに気づいてほしいんですよね」と小久保監督は言う。重圧のかかる場面での勝負強さこそ、この世界で生き残っていくためには求められることでもあった。
マジック「2」で迎えた26日からの広島との敵地3連戦は1勝2敗。カード頭でマジック1としながらも、その後は2連敗を喫した。すんなり優勝を決めることはできなかったが、今シーズン残り3試合となる1試合目で優勝を決めた。初回に1点を先制されるも、その裏に打者10人の猛攻で一挙5得点。5-5の8回には2死満塁から水谷瞬外野手(22)が、しぶとくフルカウントから押し出し四球を選んで決勝点をもぎ取った。小久保監督は「1軍も2軍もありますけど、マジック1からの試合で、結局1個勝つのってめちゃくちゃ難しいじゃないですか。彼らも一つ勝つことの難しさも感じたと思うし、ここまできて『優勝できなかったら恥だ』という思いもあったでしょうし。最終的にはいい経験値を積めたかなと思います」。
選手にとっては「自信か学び」の約2週間だった。小久保監督は言う。「この時期(優勝のかかる試合)に自分の思うようなプレーができて自信につながった選手、プレッシャーに負けて野球の怖さを知った選手が明確な課題を持てたことは学びである。そういう点では良かったかなと思いますね」。
チームは10月7日にサンマリン宮崎でイースタン・リーグ王者とファーム日本選手権を戦う。一発勝負の「ファーム日本一」を懸けた一戦でホークスの未来を担っていく若鷹が再び躍動する。
決してゴールではない。「彼らの最終目的地は1軍の舞台で活躍することなんでね」と小久保監督。この経験を財産にさらなる飛躍を期待していた。【佐藤究】



