西武シンクレア投手(25)が12日、うれしそうに前夜を振り返った。

「いまカナダから父が来ていて。仕事の合間に、1年に1回とか来てくれるんですよ」

寮での夕食後、父と会った。「いつもココイチです」。日本人の母とともに暮らすカナダ人の父は、通称“ココイチ”が大好物。

「チキンカツカレーですね。辛さは普通。ハーフ野菜付きで」

誕生日前夜のひととき。この日で25歳になった。カナダでの幼少期は近所の子と誕生日会をやった。今は。「一般社会だったらそんな年じゃないんですけど、ここにいると年齢を感じます」。そんな誕生日。

でも青木勇人ファーム投手コーチ(49)が「シンクレア、今日、誕生日でーす!」と宣伝してくれる。めでたい日だ。

そんな師匠のような父のような青木コーチが、今日もつきっきりだ。育成契約3年目。左腕からの直球は151キロを誇るものの、なかなか制球が定まらない。3軍での登板が多いと相手とも何度も対戦することに。配球がばれ、連打を浴びる。悪循環。

そこを超えていける圧倒ぶりを求めて、練習を重ねる。コントロール安定で劇的に変わる。青木コーチは「制限された中でいかに正確に動けるか」と、この日は前後をネットにはさんでのフォーム練習を課した。父のように厳しく、そして温かく見守る。

3軍生活が続く。不安がなかったらおかしい。「でも、それを考えたら止まっちゃうので」。前向きに取り組む。3軍続きだった木瀬翔太投手(21)が2軍デビューのチャンスをもらった。「木瀬みたいに成績が安定してくれば、きっとチャンスはもらえると思うので。そのワンチャンスを、なんとかものにできるように」。だから誕生日も黙々と頑張り続ける。

「お父さんにいいところ、見せてやれよ!」

青木コーチが背中を押す。13日からの3軍福島遠征を、父も見に来てくれる。「いつも日本に10日間くらいしかいないので、できるだけ会いに行ってあげられるように」。マウンドからも熱い“言葉”を伝える。【金子真仁】